第2話 世界に訪れた破壊
七年前に遡る。その日は不思議な目覚めをしたことを覚えている。
七年前、オレは都内の死んだ祖父の宅で一人暮らしをしていた。
両親と十一歳の弟は、父の海外赴任で当時はアメリカに居て、オレは反抗期で家族と距離を置きたかったこともあって、中高一貫校を理由に日本に残った。
悲しかな、スターゲイザーに成り損なったオレはとても普通な学生をしていた。
「——クス、ルクス!」
アンデルセンに呼ばれた気がして、はっと目を覚ますと、外は既に宵闇が訪れた頃だった。
身体を起こすと、壁に掛けていたアンデルセンの遺物"ベイカーライフル"が目についた。生前のアンデルセンに管理を頼まれ、父が色々と苦労して輸入してくれたものだ。
それから何故か気になって窓から顔を出して空を見た。
宵空にはいくつもの尾を引く流星が流れていた。
「流星群……か?そんな予報は——」
スターゲイザーに出会ってから天体ニュースには気を配っていた。流星群であれば見落とすことはないはずだ。
そのとき、強い地震のような揺れが訪れて、遅れて衝撃波がやってきた。窓が割れて、室内が荒れ狂う。オレも吹き飛ばされた。壁にぶつかり痛む体をしてベッドの下に隠れた。
地上に月の欠片が散弾のように降り注ぎ、世界は穴だらけになった。
一段落して窓の外を見た時、鳴り響くサイレンと東京の炎上している様は忘れられない記憶となった。
これが後に"ムーンズ・ティア"と呼ばれる大災害だ。
それから人の流れに乗り避難所に行った。一週間後父から送付日が"ムーンズ・ティア"の日のメールが届いた。
〈ルクス、無事か?父さんも母さんも無事だ。
とりあえずほっとした。オレも電話はしてみたが繋がらなかったので、無事を知らせるメールだけは送ってある。
そして、数日後父からまたメールが届いた。
〈ルクス無事か?シェルターに移動中に変な"黒い生き物"に襲われた。銃が効かなかったんだ。
ルクス、お前はもう一人前だが、一つだけ守って欲しいことがある。
"黒い変な生き物"に出会ったならなりふり構わずに逃げるんだ。そいつには決して勝てない〉
オレは弟の死を知り、自然と溢れる涙を拭きながら、「黒い生き物……?」とひとりごちた。
その日の夜、体育館の外で叫び声が響いた。
「なんだ、あれは!?」
それが後に〈
そのときは犬のような小さなコークスだったが、避難所レベルでは相手にならず、何人も虐殺された。
それから何度もコークスに出会った。その都度人類の無力さを知ることになった。
それからしばらく逃げ惑いながら生活し、一時は避難民の集合体コミューンに所属したりしたが、過去の生活が戻ってくると信じたい大人達が運営するそれにどこか上手く馴染めずに、オレはコミューンを離脱して、街中で暮らすことにした。
食糧は、最初は盗人のようにビルや民家などを探索してなんとかしていた。スーパーや飲食店は荒らし尽くされた後だったし、サプライチェーンは崩壊していた。
その中で、いくつもの"ムーンズ・ティア"での衝撃波や熱波による死体を見たり、奪い合いから人殺しの現場を目撃したり、オレ自身も略奪に遭うこともあった。
そんな経験が増え、徐々にこの生活で生き抜く術を学んでいった。
しかし、それとは対称に、次第に賞味期限の関係でオレの食料問題は徐々に苦しくなっていった。
そうしてオレはジャンク屋として、コミューンとの取引をするこの生活に至った。
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