第1話 帝王セルリアン
〈セントラル南西森の中型セルリアン出没事案について〉
9月6日セントラル南西に出現した中型セルリアンは、過去出現した「帝王セルリアン」と同型であると推測された。これは早急に征討すべき事案であり、討伐隊の編成派遣を要請する。
編成
隊長 アムールトラ
副隊長 エランド
イッカク
アラビアオリックス
トムソンガゼル
オーロックス
アクスジカ
ションブルクジカ
研修 ティラコスミルス
同 ヤマカガシ
〈セントラル南西部中型セルリアン出没についての報告〉
9月6日にセントラル南西部に出没した帝王セルリアンは9月9日に征討完了した旨を報告する。
戦果
帝王セルリアン(ヤマカガシによって撃破)
被害
殉職
アムールトラ
エランド
アクスジカ
オーロックス
負傷
アラビアオリックス
トムソンガゼル
ションブルジカ
ティラコスミルス
イッカク
◯
アムール隊長が殉死した。
その報告がこちらに届いた時点で副隊長はもう戦死していたし、辛うじて帰ってきたハンター達も、みな戦闘ができる状態ではなかった。
帝王セルリアン征討隊の後方キャンプには戦闘不能となった怪我人のハンターと医療や武具の整備を行う非戦闘員しか待機していなかった。
―私とティラコスミルスを除いては―(見習いではあるけれども)
後方キャンプの作戦室キャンプは濃い緑色の天幕で、中は常に薄暗い。私はこういった薄暗い環境が好きだけど、このテントにいるってことは、怖い思いをするってことなので嫌いだ。普段と違って好きな環境のはずなのに落ち着けない。
ティラコスミルスはいつも通り、けろっとした表情で索敵用ドローンから送られてる映像とシグナルレーダーの画面を眺めてた。
「あ、イッカクさんが・・・」
私は慌ててレーダーを覗き込んだ。イッカクさんのシグナルはまだ出てる。
・・・良かったあ〜。
「ん?どうしたの?」
ティラコスミルスが私の顔を覗き込んで言った。
「えっ!いや、イッカクさんが!って言ってたからさ・・・不安になったの。」
ティラコスミルスはふーんといった表情を見せた。
「とはいえ、さっきから動いてないからね。もう輝きは奪われただろうなぁ」
「ねぇ・・・あと戦えるハンターって・・・」
「うん。わたしとヤマカガシ、それだけだね。」
他の人軒並み怪我か・・・だしね。いつものトーンでそう付け足した。
「ねぇ・・・戦うの?」
ティラコスミルスがあまりにいつもと変わらない。仮にそれが強がりだったとしても、今の私にとってはむしろ不安になる要素だ。
「ここで逃げたら、怪我した人まで死んじゃうからさぁ、わたしは戦うよ」
やはりいつも通りだ。
「ねぇ!逃げよう!!!隊長も副隊長も死んじゃったんだよ!見習いの私達じゃ・・・勝てないよ。」
わかってる。私は「見習い」でも「ハンター」だ。こんなこと言っちゃいけない立場なのはわかってる。でも、見習いに何ができるっていうんだろう。
「ねぇ。そもそも逃げられると思う?」
ティラコスミルスは急に鋭い目つきで私を睨んできた。
「敵のセルリアンは強いよ。ここにいる戦えないフレンズのサンドスターまでとられちゃったらさ、次はセントラルに来るんじゃない?」
「でも・・・私はこんな・・・初任務で死にたくないよ!」
先輩方は死んでしまった。そんな強い敵に私なんかが・・・
「わたしも、なるべく死にたくないな〜。」
「なら!」
ティラコスミルスはいつもの口調で、
「大丈夫!」
そして続いて
「策があるから。」
ずるい。こんな風に言われたら、本当に大丈夫な気がするのだ・・・
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