第46話 おしまい

 オレの魔力で編まれていた周囲の銃は全てが消え失せ、剣をもとにしている漆黒の狙撃銃―――日蝕魔弾イクリプス・バレットと名付けよう―――だけが残った。幸い魔法と神器は使えるようで、アイギスは問題なく展開できるし、固有結界も残っている。

 しかしオレの援護射撃が無くなった剣士二人は劣勢に追い込まれ、ケンジが相手の目を浅く斬って間合いから離脱した。その瞬間、魂が枷から外れたような感覚を味わった。掌にイメージを集中させると、次の瞬間にはオレは鈍色のハンドガンを握っていた。

 神が目を再生させると、オレが握っていたハンドガンが魔力となって四散する。しかしカラクリが分かった。あの神権とやらも魔眼のようなもので、見ている相手のスキルを封じる。アルビオンの飛行スキルすらも停止させるのだから、さすが神のスキルといったところか。

「銃とかいう武器。飛び道具使いということは、貴様、剣は苦手だな?」

 げ、バレた。

 クロムメッキのような緑色の剣が超スピードで迫ってくる。辛うじて不撓の聖剣エクスカリバーで受けたが、反応があとほんの少し遅ければ、今頃オレの首とヤツの剣で野球が行われていただろう。オレのと正面から斬り合えるスペックの剣で切断されれば、場外ホームラン間違いなしだ。

 なんとか女神の護りアイギスとの併用で持ちこたえて時々反撃するも、余裕の表情で受けられる。ケンジもアリスも、最強剣同士の斬り合いには混じれないのか、全く助けに来てくれない。ソフィアはオレに身体能力のバフを掛けてくれているが、このレベルとの戦闘になると、もはや無いに等しい上昇量だ。

 無理矢理二本目をくうに生成し、魔力を爆発させる。

過剰魔力オーバーチャージ不撓の聖剣エクスカリバー!!!」

 聖剣を使い捨て爆弾にして―――アルビオン戦あたりからやっているが―――何とかそこそこの隙を作ることに成功する。オレの剣技ではコイツに決定打は与えられないし、聖剣爆弾でも致命傷は見込めない。しかし、相棒とのかつての会話を思い出す。

―――天叢雲は、確かに必殺技のポジションだけど、魔力さえあれば無理矢理再現できるんだよ。もっとも、やろうと思ったらそれこそ魔力炉が欲しくなるほどだけどね。

 王都で少し話した、なんてことの無い記憶。だが、今のオレにとっては、最高の助言だ。

 不撓の聖剣エクスカリバーに冠級炎魔法、最大の魔力出力で纏わせる。魔術属性の幻竜アルビオンも相まって、眩い青色の炎が噴き出す。肘あたりまでが燃えるように熱い。きっと火傷で爛れているだろう。しかし、そんなことは構っていられない。

天叢雲あまのむらくも!!!」

 主の魂に応じたかのように、炎の勢いが一層増していく。神の横っ腹にクリーンヒットし、レーザーで焼き切ったかのように腹から真っ二つ。下半身はそのまま燃え尽き、転がった頭にソラトは剣を突き立てた。

「オレの勝ちだ。」

 スキル封印が解除され、収納魔法の中で、日蝕魔弾イクリプス・バレットのセットが完了する。

「お前の死因は、人間を侮ったこと。それだけだ。」

「私は.........負けてなど......いな......い...」

「最初で最後の敗北、嚙み締めろ。」

「......本当に...それができるか?...」

「なんだと?」

「...ここで私を殺しても......神界に帰るだけだ.........無駄なんだよ、この肉体にとどめをさしても...」

「オレが殺すのは体じゃない。その魂を殺す。地獄になんて行けると思うな。世界を壊しかけた代償だ。」

 収納魔法から、準備万端の狙撃銃を取り出す。

「引導を渡してやる。日蝕魔弾イクリプス・バレット。」

 ドカンという銃声と共に、世界が消えた。エルラントの体だったものは灰となって消滅。次に、固有結界が宇宙空間のような世界もろとも消え去り、王城の真上に放逐される。周囲を見わたすが、妖精国はもうどこにもない。

 落下中の風切り音が耳を突く。本当はこのまま寝てしまいたかったが、気を抜くのは無事に生還してからだ。

「みんな、寄れ!女神の護りアイギス!!!」

 謎の光の膜に覆われた人間四人が、玉座を取り戻したシャルロットの眼前に不時着した。

 ようやく、終わった。

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