第35話 別れ

 気が付くと、見覚えのある洞窟の中だった。

「目を覚ましたか。ソラトよ。」

目の前には、以前戦った妖精国の守護竜がいた。

「アルビオン......なぜオレがここに?」

「三年前、傷だらけのお前をソフィアとアリスに託された。二人とも満身創痍の様子で去っていったよ。」

「三年......そうか、エルラントに斬られてからオレはずっと寝ていたのか。」

「ああ、あの切り傷は聖痕だった。私を以てしても、解呪に一年、治癒に二年かかった。」

「...ありがとう。オレはすぐに行かなきゃ。」

「待て。何の対抗策もなく向かうのか。お前の仲間が繋いだ命は、もっと大切にするものだ。」

「とはいっても、どうすればいいんだ。」

「私の魔術とスキルをお前の体に複写する。時間はかかるが、これが最善だ。早く行きたいと言う気持ちも分かるが、今は堪えろ。」


 そう言われて連れられたのは、淡く光る池だった。

「これは?」

「天然のソーマだ。ここにしばらく浸かり、お前の体に私の魔力を流す。」

「それが終わったら少し貰って行っても?」

「たわけ。終わる頃には全て枯れているわ。」

残念。ソーマは教会の大司祭や、上位の精霊にしか作れない霊薬と言われている。

非常に高価だが、聖痕やゾンビ化すらも解呪できるほどの力がある。恐らくオレの治療は、これを使ったのだろう。

小瓶一つで家が立つとすら言われるものが、25mプールほどの池いっぱいになっている。非常に勿体無いが、仲間達の命には変えられない。

「分かった、やってくれ。」

 それから複写、調整、行使のルーティンが始まった。

まず複写。アルビオンのスキルを魔力として、ソーマを通してオレに流す。一つ移し終わるのに二日ほどかかる。

次に調整。人間であるオレの体に適応させる作業だ。竜種と人間では魔術体系が異なるので、人間式にしなければ使えない。コンピューターのファイル形式を変更するようなものだろう。

最後に行使。複写、調整されたスキルや魔法を実際に使ってみる。うまくいけば次の複写、失敗すれば再調整だ。

 これを繰り返し、半年かけてオレはアルビオンのスキルをほぼ全て入手した。異常な再生スキルは、信仰という名のギフトによるものなので、俺には移せなかった。

 ここで、現在のオレのステータスを公表しよう。


ソラト

体力:750  魔力: ∞

筋力:250  防御: 150

俊敏:200  技巧: 150

魔術属性:鋼 神性 幻竜アルビオン

スキル:銃作成 銃操作 千里眼 超硬化 飛行

魔法 :火炎/冠 氷結/聖 雷電/聖 鋼鉄/聖 敏捷/冠 収納

神器 :女神の護りアイギス 不撓の聖剣エクスカリバー


もはやここまで来ると、本当に自分事なのかわからない。

 色々と補足しておくと、魔法のランクは、低→中→高→超→聖→冠→神、となっている。冠以上の魔法を人間はいないと習ったので、どうやらオレは人間じゃないようだ。

 魔術属性は、その人に適した魔法の属性を指していて、使うときにランクが少し上がる。神性はよくわからないが、幻竜アルビオンは「使った魔法が全て竜属性になる」というモノだ。要は、使った魔法がドラゴンとして分類される。

ちょっとした火の魔法でも、ドラゴン並みの強度、俊敏さなどを持ち合わせてしまう使い勝手の悪い属性だ。


「それじゃあ、行ってくるよ。今まで世話になった。」

「お前なら、きっと勝てる。時間の停止なんてふざけた能力、私たちの敵では無いわ。行ってこい、ソラト!」

「ああ!」

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