星神降臨
第33話 息抜き
妖精国から戻ってきた俺たちは、次の街に向かう前に王都で一日休息をとることにした。ソフィアのためにも王都を案内してやろう。アリスにも尋ねたが、
「二人で楽しんでおいで。私は騎士団の方でいろいろあるから。」
と言って去ってしまった。オレも一応騎士の端くれだが、下っ端のオレは付いていく必要はないらしい。雑務は夜まで続くそうなので、次に会うのは就寝前だろう。
「さて、まずはどこに行こうか。」
「私、魔道具屋さん行きたいです!」
「お、いいね。妖精国にも引けを取らない店があるんだよ。」
連れて行ったのは、国一番と名高い魔法工房だ。そこは王城などからの魔法兵器の発注なども受けており、それのレプリカを展示しているエリアもある。一日くらい簡単に潰せるだろう。
「これは何ですか?」
「投げたところに竹を生やすボールだな。竹は食器にも燃料にもなって便利だから、何個か持ってるぞ。」
「なるほど、確かに便利ですね。じゃあこっちは?」
「剣先が飛んでいく
「それもそうですね。じゃあルーンを刻んだナイフを見たいです!」
「それなら確かこっちのはずだ。行こう。」
二階に上り進むと、通路の左右に様々なナイフが並ぶエリアに入った。魔法の研究では、ナイフはよく使う道具だ。バリエーションが豊富で、大きいもの小さいもの、和風の短刀や両刃の短剣、ミリタリーナイフのようなものまで。
「切れ味が良いのってどれでしょうか?」
「この刀みたいな奴じゃないかな。ルーンは...高位麻痺毒か。」
「使いやすそうですね。予備に三本買っておきます。」
「いや待った、一本で十分だ。」
怪訝そうな顔をするソフィアを半ば強引に会計に誘導する。一度店の外に出て、人気のない路地に入る。
「なんですか、ここ?」
「まあまあ、それよりさっきのナイフを出してくれ。」
差し出されたナイフを握り、千里眼を発動させる。何を隠そう、つい最近オレの魔眼がさらに進化した。
厳密には「千里の魔眼」と「千里眼」は全くの別物だ。千里の魔眼は、千里眼に限りなく近い魔眼。しかし千里眼は、もはや神の眼と呼んでもよいほどに格が違う。
魔眼は視界の中しか発動できない。だから見えないほど遠くには影響を及ぼせないし、アルトが何をしているかなんて分かるわけがない。
だが千里眼にはそれができる。まさにすべてを見通す眼なのだ。因みにアルトは十秒後、炎魔法に失敗して黒焦げになる。
この万能の眼を以てすれば、ナイフのコピーなど赤子の手をひねるくらい簡単だ。
「解析、複製。」
ものの数秒でナイフが二本完成し、地面に落ちる。マナー違反ではあるだろうが、少なくとも法律違反ではない。
正直、トネリコの杖でカツカツなのだ。ソフィアは人界の貨幣など持っていないので、同伴者が支払う形になる。こんなことなら、格好つけてあんな高い杖を買うんじゃなかったか。いや、任務を受注して、杖の支出を一刻も早く取り戻すのが先だ。せめて元を取ってもらおう。
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