第31話 最後の試練

 朝になり旅を再開。俺たちは妖精国の大陸中央、『奇跡の祭壇』にたどり着いた。

マヤ文明のピラミッドのような祭壇の頂上にたどり着く。

「ここが、最後の試練の場所ですか?」

「そうみたいだな。アリス、起動の仕方わかるか?」

「ええと、ちょっと待ってね......ここに魔力を流せばいいみたい。」

そういって指さしたのは、祭壇中央の地面に埋め込まれた赤い石だ。

「じゃあ、行くわよ。」

「おう。」「はい。」

アリスが魔力を流し込むと、祭壇の床がゆっくりと沈んでいき、オレたちは内部に下りた。

床の下降が終わったので飛び降りると、ピシャリと水のような音がした。

「ソフィア、明かりを。」

「はい。」

波紋の浮かぶ床は光を反射し、銀色に光っている。

「なにこれ、水銀?」

アリスが聞いてくるが、オレに聞かれても答えようがない。

「あの、何だか波立ってませんか?」

「え?」

気づいたころには、水銀(?)の波が目の前まで迫っていた。

「うわああああ!」「「きゃああああ!」」

三つの悲鳴が響き、とっさに右腕を構える。

女神の護りアイギス!」

状況に比べるとオーバースペックな防御だったが、おかげでしばらく使っていなかった魔力回路が温まった。

「ソラトさん!後ろ!」

振り向くと、水銀たちは集まっていき、人の形を成した。まさに鋼の巨人だ。

「眼前の敵を凍らせよ!凍結世界フリーズワールド!」

「ヤアッ!」

「ッ!!」

ソフィアが大規模凍結魔法、アリスが神速の連続剣術、オレがレールガン十門の掃射。

初手からフルスロットルだがしかし。

「おいおい、マジかよ。」

飛び散った金属たちが再び巨人本体に戻っていく。

「ソフィア、やれるか。」

「はい、詠唱開始します。」

スティが杖を音高く突き立て、式句を連ねる。

ワレが振るうは宇宙ソラの怒り。星の剣は我が両手に託される。』

ソフィアの周囲に十個以上の魔法陣が生成され、スパークが散る。

魔力の上昇を感じた水銀巨人が、体の一部を弾丸のようにして飛ばして来る。

千里の魔眼ラプラスの悪魔、発動!」

水銀の弾丸を、オレが放った弾丸ですべて弾く。

「悪いが、銃撃はオレの専売特許なんだ。」

『――――――――!!!!!』

ノイズのような音を出して、巨人が怒り狂う。

『擬似空間侵食:魁星煌彩剣ルミノスターストライク!!』

一面の星空が広がり、星の光たちはソフィアの掲げた杖に集まり、巨大な光の剣になった。

「ヤアアッッ!!」

巨人は光に飲み込まれ、体を構成する水銀が蒸発していく。

『――――――――!!!!!』

水銀の四割ほどを失った巨人は、二回りほど小さくなった。

「ッ、ハァ...ハァ...」

激しい魔力消費でソフィアが倒れる。

「平気か?」

「...はい、何とか。」

杖を支えにして、ソフィアがよろよろと立ち上がる。

「攻撃、来るわよ!」

迫りくる水銀の大波をアリスが割る。そのまま高く飛び上がり、巨人を六つに切断する。

「ソラト!」

「ああ、任せろ!」

不撓の聖剣エクスカリバー、生成、ラディアンスバレル!」

六本の銃身を空中の水銀たちに向ける。

「聖剣、装填!不撓の弾丸エクス・ライト・バレット!」

弾丸は六分割された水銀に命中し、爆発する。

水銀たちは一滴残らず蒸発したが、爆風の中から銀色の杯のようなものが落ちてくる。

「何これ?」

「何でしょうか?」

「勝利のトロフィーじゃねえか?」

などと適当なことを言っていると、器から水銀が垂れてきた。杯の魔力が上昇していく。

「―――まさか!」

どんどんと水銀があふれ出し、巨大な人型を作っていく。

とっさに魔弾を撃ちこむが、もはや手遅れ。振り出しに戻ってしまった。

ソフィアの大魔術も二度目を撃つには魔力が足りない。アリスの斬撃属性では、流体には有効なダメージにはならない。オレが踏ん張るしかない。

空間侵食スペースインヴェイド!』

アスファルトの地面に廃ビルが立ち並び、空が曇っていく。地面には様々な銃がいくつも突き刺さっている。

オレの心象風景―――固有結界の完成形。この空間内では、オレの持つスキル、魔法のすべてを無詠唱で使用できる。

魔弾装填。

最大出力で魔弾を叩き込む。

一発放つたびに一丁破損する。

そのたびに再生成し続ける。

頭が痛い。魔力の激しい消費の影響だ。でも、ここで止められない。

聖剣、装填。

不撓の弾丸エクス・ライト・バレット。全三百門。

巨人の体を光が貫き、杯の破壊が一瞬見えた。

勝利を確信すると同時に、空間侵食が解除される。

「ソラト、大丈夫!?」「ソラトさん!」

何とか笑って、親指を立てる。

「―――勝ったぜ。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る