第26話 不撓の聖剣
ゴーレムの試練を突破したオレとアリスは、スノアの街を出発して次なる試練の地、メルティアへと向かっていた。魔力炉のおかげで魔力量だけでなく魔力出力も上がったようで、敏捷魔法の効果が以前より強くなったので、三日かかる予定だった旅路が一日ちょっとで終わってしまった。
「まさか、試練の報酬がここまでとんでもない強化だったなんてね...」
「まったくだ。しかもこのインチキみたいな強化があと七回あるんだろう?」
試練は全部で四つなので、試練の数だけ強化されると考えていいだろう。
ひと通り街を回り、食料や素材などを買い足しに行く。メルティアはスノアよりも大きい街なので、出回っている素材なども高ランクで上質なものばかりだった。
大通りを歩いていると、服屋を発見した。妖精の魔力で紡ぐ糸には、魔法に対する防御や状態異常耐性が高くなる特性がある。今着ている竜皮のジャケットは、物理防御は非の打ち所がない強さを誇るのだが、上位の炎魔法などが直撃しても火傷こそないものの、熱いものは熱いのだ。
店に入ると、様々な柄のシャツやズボンが並んでいて、カウンターには眼鏡をかけた妖精が座っている。
「オーダーメイドのシャツとズボンを頼めますか?」
「かしこまりました。ではまず採寸させていただきます。」
すると、どこからともなく巻き尺が数個飛んできて、足の長さや肩幅などを自動で測っていく。ものの十数秒で採寸は終わり、巻き尺はどこかに飛んで行った。
「では次に、付与する効果と色柄をご記入ください。効果の種類を増やすごとに追加料金が発生いたしますので、お気を付けください。」
色に特にこだわりはなかったので、シャツを白、ズボンを黒に設定する。付与する特殊効果は、この店で扱っている最高ランクの効果すべてだ。『魔力耐性、炎熱遮断、電流遮断、毒耐性、防刃』と、てんこ盛りの効果だ。かなりの額になるのだが、懐は潤っているので問題ない。料金を払うと、目にもとまらぬ早業で、注文通りの衣服を縫い上げていく。一分後には、滑らかな生地で出来たシャツとズボンがカウンターの上に置かれていた。店内の更衣室で着替え、店主に礼を言ってから店を出る。そろそろアリスと合流する時間だ。
アリスと合流した後、例のごとく街の入り口の石門を開いて試練の間へ移動する。
試練の間はやはりダンジョンのボス部屋のような部屋で、部屋の中心には美しい純白の鎧があった。独りでに動いているのでモンスター、おそらくリビングアーマーだろう。すると、リビングアーマーは刀身が黄金に光る剣を生成した。
「なによ、あれ...」
アリスが小さい声で呟く。オレも同じ感想だ。直感でわかる、あれはアイギスと同じ、神器だ。気を取られた一瞬の隙に、リビングアーマーの詠唱を許してしまう。
「......
その瞬間オレたちは光に包まれた。次に見た光景は、星空の広がる荒野だった。
リビングアーマーが剣を掲げて唱える。
「
「まずい!
星の光が相手の剣に集まり、刀身の光が一気に強くなる。リビングアーマーは一気に距離を詰め、神器同士が激突する。
剣の光が弱まっていくが、さすがのアイギスにもヒビが入り始める。エクスカリバーの光が元に戻ったので、魔弾を今出せる最高火力、750%でぶつける。兜に傷をつけたが、コアがある鎧の胸部分は無傷なので、傷が少しづつ修復されていく。
アリスが目にも止まらぬ速さで剣を振るうが、攻撃は全て弾かれ、逆にアリスが傷を負う。
再び剣が掲げられて光が集まっていく。先ほどよりも光が強いので、先と同じ強度のアイギスでは受けきれないだろう。オレは魔力炉の出力を最大にして、攻撃をガードする。
連発は体に堪えるのか、刀身の光が戦闘前より弱くなっている。今ならきっと。
「アリス、頼む!」
「ヤァッッ!!」
雷を纏った剣が、鎧のコアに次々と叩き込まれていく。コアが砕け、見えない力に操られていた鎧や兜が地面に転がる。
握られていた聖剣はゆっくりと降りていき、地面に突き刺さった。
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