第22話 炎の精霊

―――全然寝れねえ。

五十層のボスである死神を倒した後、寝袋を二人分広げたので、寝る流れになった。のだが。

「なあ、本当に真横で寝ていいのか?」

「ソラトならいいわよ。離れてるの怖いし。」

「そういうもんかなぁ。」

今オレの隣には、寝巻姿になったアリスがいる。

―――全く寝付けねえ!

当のアリスはぐっすりのようで、隣からは小さな寝息が聞こえてくる。いろいろな考えを、無理やり頭から引きはがし、ようやく眠りにつくことができた。

 次の日。

「ソラト、ちょっと寝不足?」

何でばれているんだ。クマでもあるのだろうか。

「いや、別に。それより今日は五十一層からだぞ。」

恥ずかしいので、「アリスが隣にいて寝付けなかった」などとは口が裂けても言えない。目を合わせると心を読まれそうな気がしてくるので、さっさと部屋の出口に向かって歩き出す。

五十五層から七十層のボスは、死神のような強さはなかった。二十五層、五十層のボスが特別強いという法則でもあるのだろうか。もしそうだとしたら、次の強敵は七十五層のボスだろう。

 七十五層のボスは、炎を纏ったトカゲのような姿をしたモンスター、サラマンダー。部屋の中はむせ返るような暑さだ。

「行くわよ、ソラト!」

「おう!」

魔眼発動。サラマンダーは数秒後、全範囲に炎の波を放つ。

「今だ、跳べ!」

予知通り、襲ってきた炎の波は跳んだオレたちの足元を通過する。そのまま空中で反撃。が、弾丸は空中で溶かされる。途中から魔弾に切り替え、サラマンダーの炎を散らす。

予知では左右から炎の槍が襲ってくる。

「アリス、突っ込め!」

オレは女神の護りアイギスで防御し、オレの指示通りにサラマンダーとの距離を詰めたアリスは、冷気を纏った剣で斬りつける。炎が大きく弾け、傷口が凍っている。どうやら冷気が有効らしい。

尾の薙ぎ払いを予知し、それに合わせて氷属性の魔弾を尾の根元に集中放火。燃え上がる尾は根元からちぎれ、灰になっていく。

サラマンダーがしばらく動かないことをアリスに伝えて、大技の準備をさせる。先ほどよりも強い冷気が刀身から放たれ、部屋の熱気も弱まっていく。

ブレスの予備動作を始めたサラマンダーの喉元に、すかさず魔弾を撃ちこみ妨害する。それと同時にアリスが素早く剣を振り下ろす。

真っ二つになったサラマンダーは炎と共に四散、オレは女神の護りアイギスを展開し、アリスとオレを爆風から守る。

「ソラトは魔眼に慣れてきたっぽいわね。」

「ああ、動きが間に合えば基本的に攻撃は当たらないと思う。後は反射神経の問題だな。」

そう話しながら、さらに下層を目指して、階段を下った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る