第21話 死神

 今日は、アリスと共にダンジョンの攻略に来ている。独占権を持っているため、中にいるのはオレたち二人とモンスターだけだ。

 オレたちは四本腕の骸骨モンスターと相対している。

凄まじい銃声がダンジョンに響き、骸骨の腕が残らず砕け散る。すかさず懐にもぐりこんだアリスが、

「セイッ!」

と気合一閃、不気味な髑髏どくろをたたき割る。

「よし、いい連携だったな。」

「ええ本当に。私が剣をふるっても、ついてこれる仲間が騎士団には少なかったから、今は本当に楽しいわ。」

「なら良かったよ。おっ、下層への階段だ。この階は探索しつくしたし、五十層に行くか。」

そう、オレたちが成長しすぎて、ダンジョンのモンスターたちが味気なく感じてしまうのだ。ミノタウロスと同じ、二十五層ボスも全く歯ごたえがなかった。ミノタウロスは最終ボスというのもあったろうが、それにしても弱すぎる。四十層を超えたあたりから、ようやくそこそこの相手が出てきたのだ。

時計を見ると、五時五十分。そろそろ晩飯の時間だ。アリスも気づいたらしく、

「もうこんな時間になっちゃったんだ。楽しい時間はあっという間ねー。そろそろ戻りましょっか。」

「今日はダンジョンで泊まっていかないか?飯は何食分か持ってきてるし、寝袋もある。ボス部屋は雑魚が入ってこれないし、飯食った後にボス倒して寝れば明日も攻略できるぜ?」

「ソラトもだったの?実は私もそうしたかったのよね。ソラトがそういうなら、今日はここで泊まっちゃいましょ。」

アリスが作ってきてくれたサンドイッチを収納魔法から取り出し、包み紙をはがして頬張る。

「うまい!」

「もう、そんなにがっつかなくても逃げたりしないわよ。」

あっという間に三つ平らげ、アリスも二つ食べ終わったようだ。一息ついてから、再び攻略を再開する。

五十層はほとんどがボス部屋で、他に見る物は何もなかった。

 ボス部屋の扉を開けると、巨大な鎌を持った黒いローブの骸骨がいた。背丈は三メートル弱。その姿はまさに、「死神」と形容するほかない。放たれる威圧感は、階層ボスのそれだ。

アリスが剣を抜くと同時に、死神が鎌で地面をコンと叩いた。すると地面から、氷の槍が五本、六本と伸びてくる。

慌ててジャンプして躱すと、死神の目が一瞬笑った―――気がした。

背筋に冷たいものが走る。つかの間、死神は鎌を振り上げ、オレの目の前に迫っていた。速い!回避は間に合わないので、女神の護りアイギスで防御する。動きを見てからでは間に合わない。少し目が疲れるが、千里の魔眼ラプラスの悪魔をフルで使わなければこちらがやられる。

「アリス!今だ!」

「ヤァッ!」

アリスの刃は死神の腹を抉ったが、致命傷ではない。すかさずオレも魔弾を撃ちこむ。むき出しの肋骨にひびが入るが、またしても倒すには至らない。

「くそッ、なんて硬いヤツだ!」

「さすがは五十層ボスというところかしらね。」

距離をとった死神の周りの地面が凍り始め、鎌が青白く光る。ヤツは再度接近して、あの攻撃をあてに来る。

「アリス、カウンター頼む。」

「分かったわ。」

撃てば響くような返答に少し驚く。振り向くと、アリスの刀身も光り輝いている。おそらくヒドラに以前阻まれた技だろう。

 直後、魔眼で予知した突進攻撃に合わせて、こちらは女神の護りアイギスを展開。生まれた隙に、すかさずアリスの剣が叩き込まれる。凄まじい爆発の中で、飛んでいく鎌と砕けちる骨が見える。

爆発が収まったところには、真っ二つに折れた鎌しか残っていなかった。

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