第19話 邪竜決戦/3

一週間、休まず駆けてきた。もう王都は目前だ。あの丘を越えたら見えてくるはずだ。

「なんだ、あれは...」

そこには九つの頭を持った黒い竜と、その下で懸命に武器を振り続ける戦士たちの姿があった。直後、王都外壁の上から轟音が響き、竜の頭を吹き飛ばした。そして竜の真上に飛びあがった人影が、光の刃を振り下ろした。しかし光の刃は、女神の護りアイギスによく似た障壁に阻まれ、人影は爪の攻撃で遠くに吹き飛ばされた。

おそらく、城壁からの攻撃はソラトのもの。となれば、合流して策を練るしかない。

 そうして僕―――アルト・ロレーヌは再び駆け出した。


 レールガンの砲撃は、とどめを刺すための最高火力しかもう残されていない。これを外したら、この世界は終わりだ。半ば諦めて、最後の砲撃を―――

「ソラト。」

この、懐かしい声は。

「アルト!」

目の前には、たった一人の親友が立っていた。

「遅れてごめん。ここからは一緒に戦う。」

「オレのレールガンで弱らせたところを狙ってくれ。」

「でもあの障壁はどうするんだ?」

「大丈夫だ、オレが中和する。任せとけ!」

こんな状況だからこそ、強気に笑ってみせる。

「行くぞ!レールガン!」

放たれた弾丸は、九つの頭すべてを粉砕した。

「ソラト!」 「おう!」

二人同時に、ヒドラの真上まで跳んでいく。

ヒドラがアイギスもどきを展開すると同時にオレは右腕を構え、唱える。

「展開!女神の護りアイギス!」

ヒドラの障壁とオレのアイギスは中和され、互いに崩壊する。

「今だ!アルト!」

天叢雲あまのむらくも!」

刀身から蒼い炎が噴き出し、容赦なくヒドラの体を切り裂く。そう、この炎には神聖属性があるのだ。闇の化身たる邪竜は、蒼い炎に焼かれながら身をよじらせ、最後に咆哮を上げて消滅した。

それと同時に瘴気も晴れはじめ、倒れていた戦士たちも気が付き始めた。ヒドラがあまり動かなかったのが幸いしたのか、死者はほとんど出なかったそうだ。

 一気に緊張がほぐれ、激しい頭痛に襲われる。そういえばここの所ずっと無理をしていた。何かアルトに話しかけられた気がしたが、薄れていく意識の中でその言葉を聞き取ることは出来なかった。

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