第11話 帰路

 目が覚めると、アルトに背負われていた。おそらくミノタウロス戦で意識を失ったあと、ここまで運んでくれたのだろう。

「ありがとう、もう自分で歩ける。」

「そうか、なら良かった。」

「ところで今は何層だ?」

「3層だ。すぐに出られる。」

「途中でほかのメンバーに会ったか?」

「3人と会ったよ。話を聞いたが、15層までしか行っていないそうだ。お前のことは、17層で魔力切れということにしておいた。」

「ミノタウロスを二人で倒したなんて、信じる奴はそういないからな。」

二人でひとしきり笑う。

「そういえば、今頃なんだけどさ。」

「なんだ?」

「水晶に触れたときに、アイギスと別に収納魔法なるものも覚えたんだよな。」

「そうか。収納魔法は先天的に発現する魔術だ。それを人前で使うなら、昔から使えたということにしておけ。後天的な収納魔法など聞いたことがない。」

収納魔法そのものはセーフなんだな、と少し安堵する。

  外はもう夕方で、ダンジョンに来た生徒たちの全員生存が確認された後、そのまま解散となった。

金星祝いにオムライスを食べた後にアルトとも別れ、自室で布団に入った。外傷なしとは言え、魔力切れの負荷とミノタウロス戦での緊張が一気に抜け、そのまま寝入ってしまった。


 ミノタウロス戦の2か月後、今日は冒険者ランクアップの試験を受けに来た。卒業試験が試験官との決闘だということもあり、模擬試験がてらに出向いてきたのだ。

現在は最低ランクのCランクで、そこからB、A、Sそして「規格外」のXランクだ。

Xランクの冒険者は現在13人しかおらず、剣術魔術共に人間離れした実力のため、Sランクが実質の最上位だ。

ランクは一つずつ上げなければならないという決まりはない。どこに行くにしても、ランクが高くて不便はないので、オレは一気にSランクを受ける。

ギルドの建物に入り、受付で昇級試験を申し込む。どうやら試験の相手は「受けるランク以上のランクを所持した冒険者」らしく、現在この町にはSランクは滞在していないらしい。

諦めて出直そうと振り向くと、黄金の甲冑を着込み、異様な魔力を放つ剣を携えた男と目があった。

「その昇格試験の相手、私がお相手しましょうか?」

「ええと、あなたは?」

「私はランクXの序列四位、リュウヤというものです。もちろん、実力を見るだけですので、本気では戦いませんよ。」

コイツ、明らかにオレのことを焚きつけている。そこまで戦いたいならやってやろうではないか。研究の成果を見せてやる。

「もちろん、受けて立ちましょう。」

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