第9話 女神の護り

 今日はダンジョンに来ている。学園での成績優秀者は学校のプログラムで、ダンジョン攻略に参加できるのだ。本来ダンジョンは、B⁺以上の冒険者しか入れないのだが、学生が大手を振ってダンジョンに入っていく光景はなかなか面白いものだ。

「僕たちも早くいくぞ。なんせ時間がない。」

「そうだな。」

オレとアルトがダンジョンに入ってから2時間経過。

二人だけで、未攻略の25層まで来てしまった。攻略されていたのは20層までなのだ。5層おきに強めのモンスター、所謂いわゆるボスというヤツがいるのだが、この階層は今までより広く、なかなか見つからない。

「さすがに少し疲れたなー」

などと言ってオレが壁に寄り掛かった瞬間、

「うわあッ!」

壁がずれ、隠し通路が現れた。

「お手柄だな、ソラト。行くとしよう。」

 隠し通路の先には、水晶玉が乗っている台座があるだけの小部屋につながっていた。

「なんだこれ?」

「これは魔法玉だな。水晶に触れると、特殊な魔法を覚えられる。部屋を見つけたのはソラトだし、君が触れるといい。」

水晶玉に手をかざすと、球が青く光を放った。

どこかから、声が聞こえた。オレに銃スキルを与えたのと同じ声。

「神器:女神の護りアイギスを習得しました。収納魔法を習得しました。」

アイギス。女神アテナが持っていたとされる空想の盾。それを習得した?理解が追い付かない。

「何を覚えたんだ?ステータス画面を見せてくれ。」

アルトにはあの声は聞こえていないらしい。

手を振ってステータス画面を開くと魔法欄には「収納」が追加され、「神器」の欄が新しく追加され、アイギスの名が乗っている。

「神器だと!?失われた神秘がまだ残っていたのか!?」

「お、おい。失われたってどういうことだ?」

「このスキルは人前で極力使うな。技名など死んでも言うな。いいな?」

「だから、どういうことだ。説明してくれ、アルト。」

「...すまん、少し興奮した。神器はかつて、まだ神々が地上にいた時代、強力な魔術師が神の力を魔法として再現したものだ。贋作とは言えその力は本物に迫る力を持っていたと言う。それらの神秘は、時がたつにつれ忘れられた。伝えられているのは剣、弓、槍、そして盾だ。盾というのがおそらくアイギスのことだろう。」

「そんなものをオレは覚えてしまったのか...」

「神器の盾を使える人間がいると広まれば、王都から宮殿騎士たちがすっ飛んできて研究対象にされるにきまっている。だから人前では極力使うな。」

「わかった、気を付ける。」

部屋を出て、少し歩くとボス部屋の扉を発見した。今までのボス部屋とはどこか雰囲気が違う。するとアルトが思いがけないことを言った。

「このダンジョンのボスがこの先にいる。ここが最終層だ。」

「何で分かるんだ?」

「僕の意思と関係なく魔眼が発動した。それだけの魔力量なんだ。今までとはけた違いの相手だぞ。二人でやれると思うか?」

「盾を見つけたのも何かの縁だ。逃げるのはピンチになってからで良いさ。」

二人で頷き、扉を開いた。

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