第6話 ソラトの事件簿/2

 例の変死体の事件から2日たった。捜査の進捗も公表されておらず、犯人が見つかったという情報も流れていない。学園の食堂で、アルトと事件の考察を語りながら夕食をとっている。

「もしかして、炎魔法なんかで血が蒸発しちゃったんじゃないか?」

「馬鹿を言うな、そんな火力ならあの店ごと燃えている。死体も残らんだろう。」

鋭い意見。流石に凹む。

その時。

「きゃあああああああああああああ!!!」

叫び声だ。

嫌な予感がし、半分以上残っていたカレーを放って向かった。

叫び声の発生場所には、やはり依然と同じ、流血のない死体。

「アルト、魔力追跡は今なら使えるか?」

「ああ、以前と違い、事件発生からそう時間がたっていない。追えるぞ。」

そう、アルトは生まれつき、魔力の流れや残滓を目視することができる「魔眼」の持ち主だ。前回は残滓がボケていたそうだが、今はくっきりと目に見える。

「こっちだ」

アルトが指さした方向を見ると、黒いフードをかぶった男がこちらを見ている。

オレは弾道演算のスキルの派生で「遠視」スキルを持っている。アルトは気づいていないようだが、オレにはハッキリと見える。

本来なら学園には関係者以外入ってはいけない。しかしヤツは気配遮断スキルでも持っているのだろうか、周りには全く気付かれていない。

オレはアルトと共に、「敏捷」の魔法を使って駆け出した。

すると相手もそれに気づいたようで、一目散に逃げ始めた。

しばらく追いかけっこが続き、人気のない裏路地へと場所を移した。ここなら構いなくスキルを使える。無詠唱でハンドガンを生成してヤツめがけて撃ちまくった。

しかし後ろに目でもついているのか、すべて巧みによけられる。今度はマシンガンを作ろうとしたとき、ヤツは魔術の詠唱を始めた。

以前本で読んだことのあるフレーズ。転移魔法だ。

握っていたハンドガンで反射的にヤツを撃ち、腕に命中した。が、一瞬詠唱が途切れかけたのみで、そのままヤツは姿を消した。

 事件現場に戻ると、騎士の鎧を着込んだ、美しい女性がこちらに話しかけてきた。

「君たち、犯人と接触をしたそうね。少し話を伺いたいのだけど。」

「別にいいですけど、どちら様で?」

「学園都市オリオンの騎士団の副騎士長アリス・ルージュ・コンフォートよ。」

副騎士長と聞き、一瞬驚いたが、銃スキル関連を省き説明した。

「なるほど、転移魔法を使えるのか、厄介だな...」

副騎士長アリスは難しい顔をしている。一瞬迷ったが、オレは一つの頼みごとをした。

「俺たちを捜査に加えていただけませんか?こいつは魔力追跡ができるし、なによりオレ達は、犯人と接触できた重要参考人です。きっとお役に立てます。」

「ああ、もちろんだ。私は君たちに協力を願いたかったのだ。変死体の調査結果が届いたので、君たちには伝えておく。機密情報だ。くれぐれも漏らさないでくれ。」

オレとアルトは頷く。

「死体には血が残っていなかった。」

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