魔術学園都市編

第5話 ソラトの事件簿/1

「今日も疲れたな」

 学生寮の自室に戻り、一人呟く。

魔術学園に入学してから1ヶ月が経過した。

毎日の授業は面白いし、友人もできた。ドラゴンとの戦闘で上がった俺のステータスは、学園での勉強における大きな武器となった。高い魔力量のおかげで、他の生徒より早く中位魔法を扱えるようになった。自室では銃に魔術を付与する研究もしている。

そういえば今日はこれから友達と夕食を食べにいく約束をしていた。

なんとあのオムライス屋の本店がここにあるのだ。待ち合わせ時間は5時半。時計を見ると...

「5時20分!?」

急いで部屋を飛び出し、最短距離で店へと向かった。


「3分遅刻だぞ」

「スミマセン...」

 俺のことを叱っているこの男は、この世界での最初の友人にして、魔法剣士であるアルト・ロレーヌ。名家ロレーヌ家の長男だ。一応平民生まれとして通っている俺が関わって良い様な家柄ではないのだが、彼は家柄を気にせずに、誰に対しても平等に接する良い男だ。

「ほ、ほら。店が混んできたぞ。オレらも早く行こうぜ?」

「それもそうだな。入るとしよう。」

店に入ると客たちの賑やかな声が聞こえてくる。空いていた二人席に座り、

「エッグ乗せライス2人前!」


「いやー食った食ったー」

「ああ、まさに絶品だった...」

上流階級の生まれの舌にも合うとは、どんだけ美味いんだ。

しばらくゆっくりしていたが、いつの間にか外が騒がしいことに気づいた。

「何事だろうか、行くぞソラト。」

「言われなくても。」

 そこには、複数の切り傷、刺し傷を負った死体が転がっていた。

しかし、不思議なことに血は一滴たりとも流れていないのだ。オレの疑問を感じ取ったかのようにアルトが話した。

「呪詛の中には、血を毒とし、傷跡からの流血を止めて被呪者を苦しめるようなものもある。過去には拷問などにも使われたものだ。凶器にその術を付与して殺したと考えるのが自然だろう。」

なるほど、そういえば魔術史でそんなものを習ったなあなどと思い出す。

「...でも被呪者が死んだら呪いや魔術は解除される原則じゃないか?」

「ぬっ」

どうやらこの仮説は違ったようだ。

本当は捜査をして、犯人をとっ捕まえてやりたいところだが、こういう事件に一般人が首を突っ込めないのはどの世界も共通のようだ。

残念ながら騎士団がやってきたので、オレたちはその場を後にし、自室へと戻った。

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