第2話 冒険者デビュー
目が覚めると、静かな森の中だった。
一度、〈神〉と話したのは覚えているが、どんな話をしたのか思い出せない。
周囲を観察すると、鳥のさえずり、葉のざわめく音、顔を照らす心地のいい木漏れ日、そして......蚊である。
彼らは無防備なオレの肌を容赦なく襲ってくる。小さな刺客を振り払うべく手を振っていると、突然目の前に、光るモニターのようなものが浮かんだ。
書いてあるのは、筋力、魔力量をはじめとする各パラメータと、下にある「銃作成、銃操作」の文字。おそらくステータス画面というヤツだ。
どうやら手を振ると画面を出せるらしい。幸い、目覚めた場所の近くに街道があったので、道沿いに町を目指した。
10分も歩くと、町が見えてきた。外には畑が広がり、のどかで平和な印象を受ける街だ。都会育ちのオレは、ビルの森を抜け出すことはひそかな憧れだったのだ。
しばらく歩いていると、「冒険者ギルド」と書いてある大きな看板が目に入った。(転生の際に読み書きは出来るようになったようだ)
中に入ると、大柄な男たちに絡まれて―――ということはなく、アーマーを着込んだ男や、上裸のマッスルガイ達が楽しそうに話している。案外平和で拍子抜けしていると、受付と思われる女性に話しかけられた。
「あら、見ない顔ですね。もしかして新規登録の冒険者様ですか?」
こくりと頷く。
「でしたらまずこの用紙に名前と、職業を書いてください。賢者のような上級職は、下級職での実績や特別試験が必要ですので、現在はなることができませんのでご了承ください。」
なかなか立派なシステムだなあと感心しながら用紙に名前を書き、職業欄に「射手(アーチャー)」と書いた。(本当は
すんなりと承諾され、オレは「Cランク冒険者:ソラト・ミシロ」として登録された。
今日の飯と寝床を確保すべく、手ごろなクエストをこなしてみよう。幸いにも宿も食事もギルドの近くで済ませられるそうだ。
早速、クエスト依頼のコルクボードから「スライム10匹討伐」のクエストを受注し、町の外に向かう。町を出るとすぐにスライムと遭遇した。森から町まで出会わなかったのが奇跡だろう。
今のオレには銃作成のスキルしか頼れるものがないので、試してみるしかない。最初は構造も簡単で比較的扱いやすいリボルバーをつくる。リボルバーのビジョンをイメージしながら唱える。
「作成!リボルバー!」
手から青い光が迸り、シルエットが金属の質感を帯びるのに1秒もかからなかった。
少し迷ってからサイトをスライムに合わせ、引き金を引く。
本物の銃なんて撃ったことはないが銃操作スキルの影響もあろうか、反動の影響はほとんどなかった。
放った弾丸はスライムの青い体に命中し、柔らかい体を四散させた。
ふうっと息を吐き緊張がほぐれると、握っていたリボルバーが光を散らして消えた。戦闘が終了したので、自動でスキルが解けたのだろう。
ともかく、スライムくらいなら余裕で相手にできそうだ。しばらくは簡単な討伐クエストで、パラメータ上昇に励もう。
夕方にはリボルバーの生成に使う魔力もほとんど枯渇し、スライムの討伐数もとっくに10匹を超えていたので、ギルドに戻り、報酬をもらった。
さて、夕食の時間だ。ギルドにいた上裸マッスルガイに紹介された飯屋に行き、一番人気の料理(名をエッグ乗せライス)を頼む。出てきたのは「オムライス」にしか見えないものだった。極めつけはオムライスもどきの上にケチャップ(にしか見えないもの)で書かれたハートだった。見た目に騙されるものかと恐る恐る口に運ぶと......紛れもなくオムライスだった。しかも前世で一度行った、オムライス有名店の味にも勝るほどの絶品だ。思わぬ再会を果たしたオムライスに舌鼓を打ち、を一気に食べつくした。
そんなこんなで過ごした異世界初日を思い出に刻みつつ、予約した宿のベッドで眠りについた。
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