マジックバレット

小噺みんと

旅立ち編

第1話 転生

......ここは、何処だ?


 周囲は真っ暗で無音、手足の感覚もない。何もかもが止まってしまったかのような空間。外部から情報を手に入れることを諦めたオレは、状況整理を行うことにした。


 オレの名前は三城ソラト、都内の高校に通う17歳だ。銃集めが趣味で、自室には大量のモデルガンが置かれている。

 勉強も運動もそこそこで、彼女などいるはずもない。自分で言ってて虚しくなってきたな...などと思いつつ、今度はここに来る直前のことを思い出してみる。


 今日はニュータイプのモデルガンの発売日で、朝一で自転車をかっ飛ばしていた。すると家の近くの交差点で、信号無視をした暴走車と衝突して...

 ああそうか、どうやらオレは死んでしまったらしい。

父さんは休日に遊びに連れて行ってくれたし、母さんの手料理もおいしかった。学校の連中とも面白い奴らばかりだ。もう一度会いたい。でもどうやらそれはかなわぬ願いのようだ。


「私は、あなた達人間に、神と呼ばれる存在。三島ソラト、あなたは不運にも命を落としてしまいました。しかし、あなたは異世界を救う勇者として生まれ変わらなければならない。あなたが望む能力をなんでもひとつ授けましょう。」

 どこかから声が響いた。こいつは何を言っているんだ。異世界?勇者?どれもゲームでしか聞かないような言葉だ。

「ふざけるな。オレの人生は、あんな形でも終わったものだ。オレ自身が死を受け入れたと言うのに、なぜ生き返らせる?どことも知らぬ世界を救えと?」

 生き返るチャンスを放棄するなんて、おかしい考え方だろう。しかし幼い頃、爺ちゃんの葬式に行った時、それはとても悲しかった。だが、オレは生き返って欲しいなどとは微塵も思わなかった。人生を幸せに終えて欲しいと願ったから。

「...その通りかも知れません。ですが、あの世界に降りかかる脅威は、あの世界の人間には対処不可能なものなのです。誰かがやらなければならない。」

「.........オレを転生させる時、神界ここでの記憶を全て消してくれ。思い出すと、きっとオレはその使命を投げ出してしまうから。」

体中を光が包み込む。

「一部記憶消去...実行。生前の記憶を元にしたスキル譲渡...完了......」

 そこで再び、意識が途切れた。

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