第13話 勝手至極な上皇政治

俗に云う藤原摂関政治に代わる白河の‘幼主三代の政’という次第だったが、そのにっくき白河の崩御ののち鳥羽はすぐに崇徳帝(この時12才)から政所を引いた。これで晴れて実権のともなった院政を彼は敷けたわけである。しかしそれにとどまらず11年後寵愛する得子に皇子が生まれるや、その体仁親王をわずか3才で近衛帝として即位させ、23才になっていた崇徳帝を譲位させた。つまり白河の‘幼少の政’を彼も引き継ぎ上々皇となった次第。因果はめぐるというか、なんだかもう訳のわからぬ複雑怪奇な御所の仕儀ではあるが、要はこの時璋子の栄華は去ったのである。璋子は髪を切り法金剛院に落飾させられた。得子呪詛の嫌疑をかけられたとも云うがいずれにせよ得子一派の璋子追い落としへの画策がここに成就したわけである。上皇の妃でありながら皇后ともなっていた得子とその一派(元の摂関家)はこれで名実ともに待賢門派・閑院流勢力を凌ぐことになったのだった。

 さてではここに於いて幼少以来40年弱の璋子の内実はいったいどうであったのか、阿漕の浦逢瀬に至る心の経路をさぐってみたい。傍目には乱脈と云うほかはない白河と鳥羽の性欲と業を彼女は終生身と心で受け切ったわけだが、これをして主体性のない女身のかなしさと、人形の家のノラであると、余人は論評にかまびすしかろうが、しかし飽くまでもそれは全員ではない。たとえば子を身ごもり、産むことのできない我々男であれば女性、就中母としての何某かのことはこれはわからないのである。少なくも私はそうだ。

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