第12話 謎の言葉クワンティエン
肉体五官(五欲)と精神の高貴さという永遠に対立すると思われるものが安易に融合するとは思われない。煩悩からの解脱をときながら夫婦に限り性欲の発露はよしとする、わっかたようでわからない、宗教の教えにも我々凡夫は頭を悩ませ続けている。しかしそれらへの答えをここで性急に求めることはよそう。また謎かけにはなろうが、クワンティエンというここではいまだ謎の言葉にその追及と答えを求めたいとも思うのである。
とにかく、いっときはわが袂に宿した愛しい璋子へ、得子立后というかたちで宮中からの疎外がせまっていた。単に疎外のみならず得子に皇子が誕生したことから世継ぎ争いの政変にまで発展しそうな雲行きとなって来た。すなわち璋子と鳥羽の第一子である崇徳と、得子一派の争いにである。本来なら正統な世継ぎとすべき崇徳を鳥羽は‘叔父子’として嫌い、認めなかった。璋子が自分のもとに入内したときにすでに懐妊していたと思われる崇徳を、祖父白河の種として決してわが子とは認めなかったのである。祖父の子であるなら自分よりあとに生まれても叔父になる。だから叔父子である。すべては白河の性の乱脈と(一説では御所内のすべての女に彼は手をつけたと云う。平清盛も彼の隠し子と云われているし、鳥羽・璋子の第六子雅仁親王{後の後白河帝}も彼の種と云われている。つまり孫の鳥羽に入内させたあとも彼は璋子と関係を持ち続けたわけだ)上々皇とでも云うべき仕儀のなせるわざであり、わずか5才だった崇徳への強引な譲位を鳥羽(この時20才)に迫り、実権のない形ばかりの上皇として彼を7年(天皇在位を含めれば22年)ほど置いていたのである。
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