御歌

第7話 ※第二章脚注

 ほとんど西行法師の和歌だけを紹介するような、超短いこの第二章です。和歌にある「月」とは誰をさすのでしょうか。月は手のとどかぬもの、その美しさ、高貴さにあこがれてはみても所詮はただ眺めおくだけのものでしかありません。それほどの月に法師が例えた人物とは…?一章からしてあきらかですがこの「阿漕の浦(めったにないことの例えに使われる言葉)」的人物との邂逅は出家するとは云え、いまだ在家姿の西行法師こと佐藤是清へのまたとないはなむけとなったはずです。いわば在俗のうちに得た最高の宝物として、在家への未練はもはやないとでもし得たことでしょう。しかし反面それゆえにこそいつまでも忘れられない思い出を‘人間’西行法師に与え続けもしたはずです。それが法師の修行の足を引っぱるのか、それとも「月ともした彼の人とてもやはり人、その捨て身のはなむけに応えでおくべきや」とばかり、彼の人を始めとして在家への恩返しとすべく、後の修行の糧となったかも知れません。第三章以下でその辺りを詳述しますが、それへの布告ともすべき短いこの章です。

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