第6話 桜吹雪の下を駆け抜ける義清
「義清、汝の大願成就を願う。これは心付けじゃ」そして更に「まろはただに桜花であった。色衰えて人の愛でざれば存うは難し。後の世とても汝に相見てむ。今は罷りね、義清…いや、法師様」と云ってもったいなくも義清に合掌拝礼した。余りのことに義清が返礼しようとするが「義清殿、院の御目に止まっては、今はただに…」と堀河がその背を押す。人が噂する阿漕の浦とも思える現場を院に見られることはやはりはばかられた。院の側の性の乱脈は一切問われず、一世一代の「聖俗合体」と璋子が期した逢瀬だとしても、それは絶対に、且つ永遠に認められることはないからだ。義清は文袋を押戴いて懸命の一言を云い残した。
「いずれの世にか忘れ聞こえむ(いつの世も決して忘れません)。宮様、いや、璋子様!おさらばでおじゃりまする!」北面の武士として最後の義清の姿。散る花の下御庭を駆け抜けて行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます