第2話 軍団にあった時の対処法【前編】
黒鉄がシーツと戯れているのを見かねた夜猫がそれをひっぺがし、鉄骨を器用に組み上げた物干し竿にぶん投げたところ。
「おい猫ォ! いま出撃できる機体はどれだ!?」
突如響き渡った大声に、驚いた夜猫がにゃ゛あ!? とさながら猫のような奇声をあげて飛び上がる。
「あぁ、びっくりした。何があったのかから言ってよ」
「襲撃か?」
「おぅ、久しぶりにすげぇ数来やがった。火力あるやつださねぇとキツいと思うぜ」
「星雲がそこまでいうのは珍しいな?」
「ざっと100はいるぜぇ?」
「えぇ……。今あんまバッテリーないんだけど? 月はどうしてんのよ」
勢いよく飛び込んできた、オレンジと黒に染めた派手髪の男。
遊撃兵、ジェット機を乗り回し、上空から敵を撃退することに特化したヤツ、
急降下からの、備え付けの武器での撃退に長けている。
が、問題はジェット機を駆動するためには、他のメンバーよりも多くのバッテリーを必要とすること。なるべく資源は節約したい夜猫はよっぽどのことでない限り、ジェット機での出撃を許さない。
「月はさっきまで寝てたことだけ、知ってる」
軍団が迫っていると聞いて、自分のポケットから滑り止めを兼ねた指なしの薄い手袋をとりだす黒鉄。指なしなのは精密な操作が必要な戦場で少しでも指の動きを妨げないためだそう。
「失礼な、あたいが軍団の気配を逃すわけないでしょ? もうしゃっきり目覚めたもんねー」
彼らの頭上の、錆びついたことと立て付けが悪いことのダブルパンチでびくともしなくなり、結局夜でもあきらめて開けっ放しの窓から、ゆったりと下で結んだツインテールを揺らして顔をだした、彼女は。
省エネなのに広範囲、一発百中なんざなまぬるい、万だろうが億だろうがあててやるよ、との勇ましいキメ台詞をいまだ仲間内でこすられ続けている、愛されキャラの超エリート、超長距離狙撃手、
問題は少々どころでないロングスリーパーなこと。とはいえ、このように襲撃があればちゃんと起きてくるのだから問題はないが、平気で食事を抜いて寝てしまうものだから、仲間たちは心配になってしまう。
「あと数分で目視できそーだって、ふーが言ってた」
これで全員。
炊事そして見張りが主な仕事。小柄で、長い髪が特徴な元気だけど仲間に対しても礼儀正しい、美少年、
美味しいごはん作ってるんだから、みんな僕に癒されること! んでもってちゃんと僕をかわいがること、との甘やかし上手で甘え上手というなかなかに罪深い美少年君。仲間の健康は彼によって守られていると言っても過言ではない。
「海月さん! 迎撃準備お願いします! あと夜猫さんに他二人の準備を早くって」
海月の後方から透き通った緊急時でも穏やかな声が響く。
「はーい、って言ってたっつっといて」
首をすくめて砦の中に移動する夜猫。彼女が動くとそのポケットからじゃらじゃらと音が聞こえる。工具のつまったポケットからいくつかを取り出して指にかまえると、砦の中に消えてった。
「猫ぉ、俺はどっちで待ってりゃいいんだァ?」
星雲はジェット機で戦うことが専門だけれど、バッテリー消費量がとんでもないジェット機の出撃許可がおりることは少なく、俺、銃撃兵になろうかなァ、なんてボヤくほど。
今でも、不満ばかりでしょっちゅう夜猫と喧嘩しているがいまだ、完全勝利はできず出撃許可が常時おりることはない。
「え? 下」
それ以外に何がと言わんばかりの冷たい声が砦の中から聞こえてくる。
その声に、今回も駄目かァと肩を落としたは星雲は、
「ちっきしょ、どれもこれもテメェが有能すぎるせいだぜェ? 黒ォ?」
黒鉄に軽い八つ当たりをすることにした。
「ほめるのか、文句をいうのかどっちかにしてくれねぇか?」
若干慣れている黒鉄は呆れた顔をして、ほこりやら砂よけのバンダナを口元に巻く。
星雲はちっ、と盛大な舌打ちをひとつかまして、腰に巻いてたジャケットを羽織る。
「さァて、今日の敵はどんだけつぇえんだろうなァ?」
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