生き残り達の相棒は滅びを知らない
白昼夢茶々猫
第1話 滅んだ世界の諸事情とは
「おらぁ」
草がまばらに生えている、というのもお粗末なほど砂が大半を占める見晴らしの良すぎる平原にぽつりと立つ、見方によってはひどく異様な砦の近く。
生命など欠片もなさそうな、寂れ切った砦の入り口。
もうすっかり太陽などとどかないほど粉塵に覆われた空のせいで、すっかり忘れてしまった、本来の雲の色を思い出せそうなほど白い腕が、しっかりと握りしめたバールで硬い音と火花を盛大に散らせて、小型哨戒用機を撃退する。
「黒、そろそろここもまずいかもなー」
「あん? どうした猫」
「ほらこいつ」
猫と呼ばれた少女は、その細めの腕でどうやったのかと問いただしたいほどきれいにへこんだ虫のような形をした機体をひっつかんで、洗濯をしていたのだろうか、シーツに襲われているように覆いかぶさられている青年、黒に見せる。
「げ、位置特定センサー付きか。でも、また引っ越すにしても物資がどう見ても足りねぇな。どうすっか?」
そんなことを言いながら、困ったように笑う黒。
ちなみにその体にはいまだシーツが絡みついたまま。
どこをどう抜き出しても滅びているとわかる情景の下。
一見、表情を動かさず見方によってはのほほんとしているようにも見える彼らは、今日明日、もしくはあと1時間後かもしれないほど命の危機にさらされている。
機械文明が発達しきった末路。
どこかのなんちゃらとかいうその界隈では有名らしいハッカーの仕業で世界は滅んだ。
日常を侵食しきった機械たちに伝染するようにばら撒かれたウイルス。
そのウイルスに感染した機械たちのプログラムは、人間を滅ぼすように書き換えられた。
各有力国の優秀な科学者たちが必死に対策しようとした結末のようなものが今の世界。
ある国は機械が鉄でできていることが多いことに着目し、超強力な電磁石で機械を1か所にまとめて処分しようとしたが、機械化の進みすぎた世界で、その国は大体の物がひとまとまりになってつぶれたらしい。その磁石がまだ動いているかどうかは当然誰も知らない。
またある国は罠のように溶鉱炉を仕掛け、倒すことを試みたが、その国を襲う機械がいなくなるよりさきに、資源が尽きて失敗に終わった。ちなみに溶鉱炉に消えていった機械の中に『アイルビーバック』と言った学習意欲の高かった機械がいたとかいなかったとか。
そしてある国は、人間対機械とかいう馬鹿なことを実行した。
特攻部隊という名の死ぬために選ばれるような兵に、身分の低い男性から選ばれていった。次に身分の低い女性、そのあとは成人している順に戦地に送り込まれた。
こんな一連の出来事で1番馬鹿なのは、最後の国の実行策が1番上手くいってることだろう。
どうして現在進行形かって?
整備士、
この2人は、特攻部隊の残存兵。滅んだ世界で未だ戦い続けなければ生きられない運命に放り込まれた哀れな兵の一部。
彼女たち以外にも数人仲間がいるがそれはまたおいおい。
軍団に出くわすことはもう珍しく、少しは余裕も出てきた彼女たちの生活で特筆するならば。
黒鉄、君は洗濯したシーツを地面に引きずらない方がいい……、
「おい猫ォ!」
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