第6話 逆境を好む者達
命が燃えるのが好きだ。
生命がほとばしるのが好きだ。
逆境に負けずに睨みつける双眸がたまらない。
命が消えるのは嫌いだ。
生命が押し込められるのが嫌いだ。
逆境に逆らわず犠牲をよしとする溜息に虫唾が走る。
だから、生贄を見つけた時は踏み潰すことにしている。
生贄を捧げる方も、捧げられる方も、生贄以外は全部。
決死の覚悟も苦渋の決断も、ただの無力と変わらないことを知れ。
ということをしていたら、破壊の邪神と呼ばれるようになった。
あらゆる生きとし生ける者の敵。全てを無に帰す天災。
あながち間違いでもない。
抗いようのない災害が形になったもの、しかも悪意がない。
さて、どうする?
…生贄を捧げられた。
どうも生贄を横取りする邪神だから、生贄を上納すればいいと思ったらしい。
うーん、壊すか。興醒めだ。
嫌いなモノを潰していただけなのに、嫌いなモノが向こうからやってくる。
しばらく放っておこうか。それも誤解されそうだな。
思いついた。殺そう。見せしめだ。
生贄を惨たらしく殺せば、少しは懲りるだろうか。
で、今まさに生贄さんを〆ようとしているんですが。
悦んでるのナンデ?
このパターンは初めてだよ。
にこにこにこ。
「あなたに会いたくて会いたくて。来ちゃいました。」
にこにこにこ。
「ナンデ?」
「一目惚れです。強くて、美しくて、ためらいがない。ことごとくを刈るくせに、刈り残した命に見向きもしない。まさしく災害そのものです。」
「ケンカ売ってる?」
「愛を売っています。押し売りです、買って下さい。」
「ヤダ」
「そう言わずに。取るに足らない羽虫の戯言などお気になさらずに。」
「こういうの好きじゃない」
「私はあなたが大好きです。あなたに殺されるまで付きまとう自信があります」
ヤバい。抗いようのない災害だなんて、驕っていました反省します。
天災に対抗する手段が人災だなんて考えたこともなかった。
何でも思い通りになるなんて思っていないけど、
こんなにどうにもならないことがあるとも思っていなかった。
「ごめん、用事を思い出した、また今度ね」
魔女は逃げた。
人の多様性は生存政略だったな、なんて現実逃避をしながら。
変態は失恋した。
(諦めないが寿命が先に来る)
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