第4話 電車と言えば

何度か休憩を挟みながらも、私たちは駅に到着し、電車に乗り込む。

休日ということもあってか、電車はほぼ満員だった。座る座席などどこにもなく、私たちは吊革につかまって目的地へ向かうことにした。

いくら体力がないるーちゃんでも、少し電車で直立するくらいは耐えられる....はず。

数分後。やはり、直立する体力には問題なかった.....のだけど。別の問題があった。

それは、あまりにもるーちゃんの体幹がないということだ。現にるーちゃんは吊革につかまっている腕以外が常に揺られ続けている。.....なんかかわいい。

また数分後。この電車は各駅停車なので、当然ほかの駅からも乗客がくる。

そして、今ちょうど、停まった駅からそれなりに人が乗ってきた。もうこれ以上は定員オーバーだ。私とるーちゃんは、人ごみに押されて若干分断されてしまった。

急いでるーちゃんにメッセージを送る。

『るーちゃん、大丈夫?』

『うん、なんとか....』

『よかった。……もうちょっとの辛抱だからね』

『ありがとう……』

私もるーちゃんも、人混みに流されながらなんとか踏ん張る。そして、るーちゃんのいる方をふと見ると……

『る、るーちゃん?』

『ん……?』

『大丈夫?顔色悪いけど』

『あ……うん。ちょっと人に酔っちゃっただけ……』

『本当に大丈夫?人酔いなら、次の駅でいったん降りよう』

『いや、ここから目的地まであと少しだし、頑張るよ』

『でも……るーちゃんがしんどそうにしてるところ、あんまり見たくないよ』

なんて、やり取りをしている時だった。るーちゃんが脈絡なく、こんな文章を送ってきた。

『助けて』

『痴漢、されてる』

ッ。私がちょっと離れた隙に...!こんなことになるなら、手の一つでも握って、離れないようにしておくべきだった。

『どこ触られてるの?』

『お尻……』

一応確認してみた。性器とかに直接触れてたら痴漢野郎を今すぐぶっ殺すところだったわ。お尻でもまあ、許すわけないけどね???るーちゃんのそういうところに触っていいのは私だけなんだよ!!

(いや実は恥ずかしいからという理由で私でも若干拒否られてるけど)

私は、るーちゃんが痴漢されている方向に向かう。こうしている間にも、るーちゃんは恐怖と戦っていたんだな……なんて思いながら。

そして、やっと到着した、その時である。

「この人、痴漢してます!!」

一人の青年が痴漢を告発していた。そうしたら痴漢野郎はそそくさと逃げ出そうとした。

....逃がすかよ。私は即座にその男の足を引っかけ、躓かせる。

その隙に青年は追いついたらしく、男を取り押さえた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る