37話・学園祭
集合場所は学園の正面玄関前だった。
集合場所としては良かったのか、それとも悪かったのか。
大勢の生徒達が正面玄関で友人達と待ち合わせをしていたため、恐ろしく混んでいた。
なかなか理人や一条と合流することが出来ないだろうと思っていれば、大きな歓声や悲鳴と共に生徒達の視線が理人や一条に向けられたことにより、二人の居場所をすぐに特定することが出来た。
こっちから歩み寄れば簡単に合流することが出来て、妙子とも1分と待たずに合流する。
しっかりと化粧を施して、露出の高い服を身に付ける妙子は、やけにテンションが高い。
にやけてしまう顔を理人達に見せないようにして、表情を引き締めようとする妙子の表情は奇妙なものになっている。
今にもつり上がりそうになる頬を強ばらせて、平静を装おうとする妙子と共に肩を並べて歩きだす。
「バスは混んでるね。電車で行こうか」
学園前のバス停は、隣街の学園祭に参加する気満々。妙子と同じように、やけにテンションの高い大勢の生徒達で混みあっていた。
「あの場に足を踏み入れる勇気はないな」
普段から生徒達に囲まれなれている一条が、大勢の生徒達を見て表情を引きつらせる。
「駅まで15分ほどだし、歩きましょう」
普段よりも声が高い。
爽やかな笑顔を浮かべる妙子は、理人や一条に好印象を残そうと張り切っている。
「駅も混んでそうだな」
駅に続く歩道橋に視線を移すと、大勢の生徒の姿がある。
駅に向かう道のりと共に、駅構内にも人が大勢いるだろうなと予想して言葉を続ければ
「あぁ。いるだろうな。でも、バス停よりはましだと思う」
一条が返事をしてくれる。
確かに一条の言う通りだと思う。
先頭を歩く理人や一条に続いて駅に向かって足を進める。
大勢の生徒達が駅に向かって足を進める中で、時折生徒達が理人や一条に視線を向けているのが分かる。
バス停でバスを待っている生徒の中に、理人が側にいることに気づいた生徒がいた。
友人と話をしてすぐに結論をだした生徒が、俺達の後に続くようにして足を踏み出す姿がちらほらとある。
一定の距離を開けながら後に続く生徒達は、決して理人達を追い抜こうとはしない。
常に理人や一条が視界に入るように距離をとり足を進めながら、学園祭の話題で盛り上がっている。
「りんご飴やいちご飴あるかな?」
好物を口にする女子生徒の問いかけに対して、男子生徒が学園祭のパンフレットを取り出した。
「りんご飴もあるってよ。他にもいちご飴やぶどう飴も売っているらしい」
「他には? 何が売っているの?」
パンフレットに興味を引かれて足早に男子生徒の隣に移動した女子生徒が、開かれた用紙を覗き込む。
「焼き鳥やお好み焼きやたこ焼きは入口付近。はし巻きやカステラや唐揚げは正門玄関側の右側。綿菓子や大判焼きやフライドポテトは正門玄関側の左側」
「食べ物のほかにも屋台が出ているの?」
女子生徒の問いかけに対して、男子生徒はパンフレットを開き中を確認する。
「金魚すくいやスーパーボールすくいやヨーヨー釣りや輪投げや射的があるらしい。種類豊富だな。子連れも多いからお面もあるぞ」
パンフレットを見ただけでテンションが上がる。
はしゃぐ男子生徒の後を追う女子生徒は小走りである。
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