24・井原の道トンネル(続きます)
身体から一気に力が抜けるような、脱力感が押し寄せる。
親父が事故に遭って死んでしまった何て実感は全くなくて、実はドッキリでしたと今にもひょっこり現れそうな親父を願望を込めて期待する。
しかし、警察署内へ足を踏み入れる事により現実を突きつけられる事になる。
親父の遺体は損傷が激しく一目見ることは叶わなかった。
DNA鑑定の結果が出るのには時間を要する事を告げられて、気も
顔を涙と鼻水でぐしゃぐしゃにしている弟に洗面台で顔を洗ってくるように声をかけてみるものの、弟は呆然と立ち尽くしたまま動こうとはしない。
「一先ず洗面台に行こう」
弟の背中に手を添えて強引に洗面台に移動する。
洗面台の鏡に視線を向けたところで気がついた。
「何で……」
ポツリと考えが口をついて出てしまった。
思いがけずに口から出てしまった言葉を弟はしっかりと耳にしていて
「何が?」
俺の視線の先を目で追った弟が首をかしげる素振りを見せる。
どうやら弟には見えていないようで、俺の背後に佇む男性がゆっくりと弟の背後に移動するのが見えて、気づいたときには腕を伸ばして霊の腕を掴もうとしていた。
弟の身に危険が及ぶ前に引き剥がそうとしてみるものの、手は男性の霊に触れることが出来ずに空を切る。
にんまりと笑みを浮かべたまま、すーっと霊の体が透けていき視界に捉えることが出来なくなってしまった。
慌てて視線をさ迷わせてみるものの、ついさっきまで確かに見えていた霊の姿は何処にも見当たらない。
目を大きく見開いて、周囲をキョロキョロと見渡す大学生の異変に気づき、弟は不安そうに
「大丈夫?」
問いかける。
ポツリと呟かれた声は随分か細くて
「兄ちゃん? 本当に大丈夫?」
弟の目は精神的に不安定になっている大学生の姿を捉えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます