今宵、あなたの心に溺れる2

俺は中学受験をした。くだらない事ばかりやって、つるんでいる自分をやめたかった。勉強は、もともと出来る方だったから行けるっしょとか思っていたら、第1志望の学校に落ちた。結局第2志望の学校に行くことになった俺は、中学デビューに向けて準備をしていた。そんな学校の初日、知り合いがいることに気がついた。確かあいつは…頼られてて友達沢山いるのに、つるまないで1人で居るときもある、俺の憧れの存在だった。彼女はずっと気になる存在だった。同じ学校に、慣れて良かったのか悪かったのか。俺の母親のおかげで、彼女と一緒に学校に行くことになった。今まで知らなかった、彼女の一面が知れて物凄く嬉しかった。彼女の新しい顔も知った。笑顔、真顔、小馬鹿にした顔、泣きじゃくる顔、どれも新鮮だった。だんだんと惹き込まれ気付いたときには、好きになっていた。


中学生にもなると、男女が2人で学校に来ると、付き合ってるだの好きだの言われる。彼女はさらりと、「全然違うよ〜」と言って、焦っている自分がダサく見えた。俺も交わして誤魔化していた。そもそも、俺と彼女は性格が真反対だった。彼女は、何でも出来てコミュ力化け物の女だった。きっと先生に怒られるなんて、経験したこともないんだろう。それに比べて俺は、ただの不良だ。そんな俺達は、次第に学校では話さなくなり、話すときは最寄り駅まで行く方の電車で会ったときだけだった。


ある時、電車で会った彼女に俺は言った。「彼女つくりたいな〜」俺は様子を見る。「なんで?」と言われ内心焦る。「ええ、なんでとかないけど、普通に楽しそうだし。」「ふーん」「まあ、ほんと誰でもいいんだけどね。」…俺達に空白の時間が過ぎた。「誰でもいいなら私でいいじゃん」彼女は言った。へ?情けないほど驚いた。俺は咄嗟に返事が出来なかった。そろそろ俺が降りる駅。彼女は言った。「なーんて冗談。じゃーね。また」彼女は微笑んで手を降る。俺は小さく呟いた。またね。どっちが彼女の本心なんだろう。友達にゲームに誘われても、上の空で考えていた。夜になっても、眠れなかった。何が正解だったのだろう。なんどセーブしても正しい正解は、当てられない気がした。


結局、彼女は転校した。家の都合と言っていたから、俺のせいじゃないかなという不安はなくなった。でも俺は、彼女に連絡出来る勇気がなかった。ほんっと情けない男だと自分でも思った。




いつまでも彼女の心で溺れてたい………最後の微かな願いだった。






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