隅田圭一郎

『友人』




 今日、友人の葬式があった。

 棺の中で花と遺品に埋もれ、白装束を着ていた、首元以外は綺麗なアイツ。

 小学校から大学に入るまでずっと一緒だった親友が、目の前で死んでいる。

 ……なかなか、受け入れ難い。


 はぁ……アイツが最近、変な夢にうなされてるって聞いてたけど、まさかこんな事になるとはな。




 アイツと最後に会話したのは3日前のことだ。


 「おい、大丈夫か?」そう声をかけても、アイツはただボーッとしていた。

 最近、彼の様子がおかしかった。

 夢の話を聞いてから、ますます心配になった。


 「ちょ、食事はちゃんと食べてんのか?」と尋ねてみても、友人は無言で首を横に振った。

 最近のアイツの目には、今までの明るさがなかった。


 俺が苦笑いしながら「夢の話、本当に怖かったよな。……でも、夢だろ?」と言ってみると、アイツはゆっくりと首を縦に振った。

 そして、静かに口を開いた。「今日、また同じ夢を見たんだ。夢の中でまた追いかけられて、また死んで……また今日も、目が覚めた時に自分の首を絞めてた」と、虚ろな目で答える友人。


 アイツの話はそこで途切れた。


 アイツはしばらく何も言わず、ただ震えていた。

 そして、突然立ち上がり、部屋を出て行った。

 かなり病んでる様子だった。

 俺にはただアイツの背中を見つめることしか出来なかった。


 そして、その次の日、アイツからの連絡が途絶えてしまった。

 アイツは大学にも来なかったし、いつもは俺より早く来る筈のバイトにも来なかった。

 だからその日の夕方、アイツが心配で部屋に行ってみたら……信じられない光景が広がっていたんだ。


 少し散らかった部屋の中で、アイツはベッドに横たわっていた。

 顔は青ざめ、首には締め跡がくっきりと残っていた。

 ……何度アイツを揺すっても、どんなに声をかけても、既に駄目だった。もう息はしていなかった。


 警察は自殺と断定したけど、俺はそうは思えない。

 きっと、あの夢のせいだ。




 ……俺はいつも、「そんなのどうせ夢だろ、大丈夫だって」なんて言ってしまっていた。

 ごめんな、怖かったよな。真剣に話を聞いてほしかっただろう。

 本当に、ごめん。


 何度心の中で謝っても、もうこの声は……もう二度と、アイツに届かない。

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