啓田ゆうき
『廃病院で首を絞めてる人』
なぁ、ちょっと聞いてほしいことがあるんだ。
最近、変な夢を見てるんだ。
ここ1ヶ月、ずっと毎日見てるんだよ。
内容が意味不明で、まず廃病院の廊下で立ったままの姿勢でいる所から夢が始まるんだ。
そして、廊下の先から変な声がするんだ。ちなみに、声は男性の時と女性の時がある。
くるしぃいよぉおオおぉ。
くぅるしぃいいいぃ。
くるぅしぃいいよぉおおおオおぉぉぉオ……。
その声がした後は、必ず知らないおじいさんとかおばあさんが『204』って書かれた入院室の扉から出てくるんだ。走って出てきたり、歩いて出てきたり。
しかも、両手で首をギッチギチに締めながらこっちに向かってくる。
……いや、『向かってくる』より『追ってくる』の方が正しいかも。
その時の顔が怖くてさ。
口を大きく開けて舌をダラッって出して、目はカッと開いて、鼻からは血がドバドバ。
僕はその場面が始まったら、だいたいの場合はそこから逃げ出す。
そして、逃げた先にある階段で足を踏み外して死んで……ようやく現実で目が覚める。
最悪な内容でしょ?
……で、まるでタイムリープしてるみたいに次の日もほぼ同じ夢を見るんだ。
そのおかげで最近は寝不足。
で、僕は最近この夢を終わらせる方法を模索するようになったんだ。
例えば、声がしたら耳を塞いでみた。
でも、耳を塞いだら声がもっと大きくなって、結末も変わらず。
次に階段から逃げないで、別の道に逃げたのに、なぜか急に死んだ。結末は死んでるからほぼ変わらず。
……でも、昨日。
ついに結末だけは変えることができたんだ。
方法は、病室から出てきた人から逃げないことだった。
逃げないでその場にいたら、首を絞めていた人はその場で倒れて死んだ。
あー、よかった……って、思うじゃん?
よくなかったんだよ。
その後、自分の首を絞めて夢が終わるようになっちゃったんだ。
……どういう事かって?
自分でもよくわからない。夢の中で勝手に体が動いたんだ。
つまり、結末が『階段からの転落』から『自殺』に変わっちゃったんだよ。変わるなら良い方向に変わってほしかったのに。
しかも、現実で目が覚めた時、自分の首を本当に締めちゃってたんだ。
……もし、今日もあの夢を見たら、結構危ないかもしれないよね。
どうしよう、今日から寝るのも命懸けになっちゃった。
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