鈴木風花

『缶の中の蝉』




 これは、今から15年前。

 私がまだ小学3年生だった頃の思い出です。

 私はその年の夏休みに、一生記憶に残るであろう最悪な出来事がありました。




 私の家は公園の近くで、そこには蝉の声が響き渡る大きな木がありました。

 その日も、いつものように蝉たちが一斉に鳴いていた。


 当時の私は宿題なんかちっともやらず、毎日公園で遊んでいました。

 木に付いている蝉の抜け殻を集めたり、友人がいるときは一緒に遊んだり。


 そんなある日、公園で一人で砂遊びをしていると、砂場の近くのベンチの下に缶があるのを見つけた。

 それは、古びたねこ缶。もう使用済みのようで、ふたが開いていました。


 好奇心から手に取ってみると、中には蝉がいっぱい入っていたんです。

 しかも、中身の大半はまだ生きている蝉。

 でも、羽根がもがれ、体は潰れかけている。


 蝉は、缶の中で動けずにいた。相当弱っているようでした。


 蝉たちは、缶の中でどれだけの時間を過ごしたのだろう。

 そして、どうしてこんな場所に閉じ込められたのだろう。


 私は怖くなり、缶を公園の隅に置いて家に帰りました。


 そして次の日、どうしても缶の事が気になって、公園に戻ったんです。

 すると、缶は潰れていて、中の蝉たちはすべて死んでいました。

 私は、何者かが故意に蝉を缶に詰めて潰したのだと、幼いながらに気づいてしまいました。


 その日以来、私はその公園には2度と近づくことはありませんでした。




 これが、私の経験した話です。

 最近知った話ですが、あの公園で最近猫の死骸が大量に発見されたと言う噂が地元で流れているようです。

 ……やったのは、あの事件の犯人なのでしょうか。

 真相は知りたくもないですが。


 では、ここまで聞いてくださり、ありがとうございました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る