第13話 お役に立てましたわ!
その日のうちに、ディナーレには緊急事態がしかれて、町中に警備騎士がうろつき始めた。
女の子の落下死体を捜していると、クレッグが風の声から聞き出した。
死んだのだと確信があったのだろう。
だがこちらには、風の声を聞けるクレッグがいた。
カタリナの落ちてくる正しい位置で待っててやれた。
一行は、ディナーレが封鎖される前に、街を後にしていた。
夕刻まで、さらに西に向かって、アルテア王国の郊外の街、サントスまで着ていた。
「今夜は、久々に宿を取りましょう」
クレッグの提案に、レジ-ナも喜んだ。
カタリナは、すっかり無口になってしまった。
カタリナは、怖いことは何も無いと思っていた。だが、実際は違った。風の加護がないばかりに、空中に放り出されて「本当に死ぬ!!」と思った目にあったのである。
宿で、大人しくなったカタリナとレジ-ナは、いっしょに風呂に入ってくれた。
旅の汚れを落とし、頭も洗って肩まで切ってしまったが、巻き毛も復活である。
この日は、久々にドレスをマジックボックスから出してくれた。
カタリナは、久しぶりにいつもの自分に戻れた気分だ。
食事の後、カタリナは、クレッグに部屋に来るように呼ばれた。
「ちい姫、何か見ましたか?」
「ハイですわ。何か設計図のようなものを王宮の一番奥の部屋で数名の騎士と王様らしき人が」
「どんな設計図です?」
「あたくしに言われても分かりませんわ。でも映像をここに出すことなら出来ましてよ」
一同はどよめいた。
レジ-ナが、すかさず人差し指を口に持っていった。
ここでも目立つのは良くない。
「じゃあ、ちい姫を囲んで座れ。ちい姫、お願いします」
クレッグが静かに言うと、カタリナは王の間で見てきたことを思い出して、皆の頭の中に映像を送ったのである。
「船? の設計図のようですね」
背の低い騎士が言った。
「お前の家は、大工だったな?」
クレッグである。
「はい、造船は専門外ですが、前に貴族の遊覧船を造る手伝いをしたことがあります。その時に図面から見てましたから」
「これも遊覧船か? 王がこそこそと少人数だけ集めて話し合いをするとはな」
「僕には判断できかねます。時間をくだされば、この設計図を書き写します」
「うん、そうだな。後はこのサントス大神殿の一報入れておこう。ちい姫、映像はどれくらいの期間見れますか?」
「忘れない限り見れますわ」
みんなの役に立てて、嬉しいカタリナであった。
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