第22話 後悔の残響(4)

 それは突然起きた。


 ウ"ゥ"ウ"ーーーー!


 それは甲高いアラート音だ。

 電柱についている拡声スピーカーから響いている。

 

「え!?」

「おいおい……。アラートが鳴ったってことは、一番の最悪パターンじゃねぇか。」

「……どこの馬鹿だい?特殊業務局HSAT課の部隊が来るでしょ。」


 日和国においてこの音が流れる時。

 それは、犯罪組織によるエンブレイス交番と特殊業務局を除くエンブレイス警察では対処及び制御不能となった組織犯罪、大規模犯罪が起きた、もしくはそう判断された時に行われる。

 これが鳴った時、エンブレイス警察特殊業務局が出動する事を意味し、同時に現在行われているイベントの続行不可能と警察による公的破壊活動犯罪組織の鎮圧が行われる事を意味する。


『緊急事態発生。犯罪組織オルキヌスによる大規模犯罪A-21が発生。第三祭り広場及び価値判断塔を含む市場区Fエリアに滞在している者達は至急批難を開始せよ。避難場はすぐさま開放し、避難誘導にあたれ。繰り返す。緊急事態発生。犯罪組織オルキヌスによる……』


「大規模犯罪A……つーことは、広範囲型連続強盗か。」

「Fエリアだけでなく此処と価値判断塔まで巻き込むとなると……相当大規模だねぇ。オルキヌスって確か、4、50人位の組織でしょ?……一店舗につき、どれ位の人数なのかな。これ、単独犯行もあるじゃないの。」

「広さ的にほぼ単独で犯行していってるな。しかもかなりのスピードでやっている可能性がある。それを一斉にやっているから交番と警察の奴らが対処できなくなっちまって、特殊業務局派遣が決まったって所だな。」


 放送から板菜と小守はあっという間に現状を解析していく。

 周囲の人は頭を抱えている者、何でこんな時にと愚痴を漏らしている者、避難指示に従い避難所として開放された施設に入る者……。其々様々な行動をしている。

 中瀬はおろおろしだしそうになったが、「板菜」と鋭く言い放った小守に従い、板菜は中瀬を抱える。


「バタバタしそう。」

「しいないでくれ。」

「はい。」

「……。これ、避難所も破壊されそうだね。」

「あ?……ああ。そうだな。」

「確か……こっちだったかな。ついてきて。」


 広場から離れ、路地裏へと小走りで入る小守についていく。

 路地裏は整備されており、タイル作りだ。

 電灯がある為、暗くなりやすい所だと言うのに明るい。

 小守はそこそこ進んだ所でしゃがみ、床をこんこんと叩く。

 その数秒後。


「ここだね。」


 そう呟いてタイル幾つか、縦に外す。

 そうして開けられた場所には、階段がある。


「これは……。」

「市場区の路地裏にだけ存在する、緊急避難通路。もう五、六年前に使われなくなってしまったけれど……。今でも使えるよ。」

「……知らなかったな。」

「初めて知りました……。まぁ、今はもう使われてないし、知らせる必要性も無いですよね。」

「まぁね。そもそも不特定多数に知られたらコレを悪用されかねないし。元々の使用目的は……。いや、いいか。行くよ。」


 階段をずんずん進んでいく小守を見て、下ろされた中瀬と小守の背を見つめる板菜は、小守を信頼し、階段を下る事にした。

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