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 鈴一は二発目の弾丸を撃つ。

 それをさっそうと避ける。

 あんまり早くはない、というか天授者用の銃じゃない。

 レーザーガンみたいな第五武器でもない、第一から第四? ああでも第一、第二は骨董品なんだっけ? じゃあ第三、第四? ああもう、分からない。けど多分旧式の武器に分類される銃かな。


「やぁーっぱ天授者か。この距離の弾丸を見て避けましたなんざ、一般人には普通は無理だからな」


 距離は30メートルもない。この距離の弾丸を精確に捉え、尚且つ避けるのは、対天授者用銃でなくとも一般人には不可能だ。

 もし、それを避ける事が出来るのであれば、それは人外離れした動体視力、反射神経、運動能力を持つ存在。

 天授者であるならば、よほど運動が不得意でない限り、これを行う事は可能だ。あまり戦いの心得の無い私ですら可能だ。まぁ流石に対天授者銃とかとなると話は違くなるけれど。アレは普通の武器だとめっちゃ余裕で避けたりぶっ壊したりする天授者相手に通用する武器をってなって作られた奴だからねぇ。


「いやぁ。この確認方法、楽だよなぁ。避けたら天授者、避けなかったら死ぬ。手間が省ける省ける」

「物騒な確認方法だぁ……」

「裏民では普通だよ。天授者程厄介な奴はいない。戦闘系じゃなくても、大量虐殺位余裕だからな。……いや、それは一部か?」

「一部ですよ。精々、30メートル弾丸発砲を避けられる位です、普通は」

「そうかそうか……。ありがとな、ボクの疑問に答えてくれてよ」

「じゃあ見逃してく」

「殺すぜ」

「デスヨネェー」


 三発目が容赦なく発砲され、それをさっと避ける。

 そうだよね、見逃さないよね……。

 別に死んでも良い・・・・・・けど、沈むな・・・って怒られ確定なんだよなぁ。

 店長マジで怖いからマジで勘弁して、本当に勘弁してぇ。


(さて……神苑天稟使いたいけれど、同化している最中に絶対殺されちゃいますよね、コレ)


 『匿名希望』を使えば、逃げ切る事自体は可能だし、それこそバスが来る残りの7分を耐え忍べられるだろう。

 しかし、『匿名希望』を使う為には、幾つかの制約がある。


 一つ目は眼鏡を外す事。

 別に外さなくても使う事は可能だが……鈴一のような裏民であり、推定天授者であろう人物や、そうでなくても天授者だと予想している相手に単身特攻出来る奴は、眼鏡を外して全力で同化しなければ捉えられる可能性が遥かに高い。

 二つ目は時間がかかる事。

 世界其の物と同化するのだから、それこそ数秒の時間が必要だ。意識を消すという作業は時間がかかる。むしろ、数秒で意識を消し、世界と同化出来るのだからこれでも早い方だ。……そもそも、この人の器が店長曰く特別性だとかで、良く数秒で同化出来ますねって言われた。この体辞めてぇ。言い方的に普通の体なら……。

 他にも色々あるが、ともかく、この二つの制約が現状ではかなり厳しい。

 眼鏡を外す間に鈴一は攻撃が出来るし、意識を消して同化する間に私は殺されるだろう。

 さっきからリボルバー? ハンドガン? で攻撃してきているが……その気になれば接近戦で殺す事ができる筈だ。

 なのにしてこないのは、私の神苑天稟が分からないから。もしこれが接触する事で発動する神苑天稟だった場合、一気に形成が逆転する。接触した結果体バラバラになりましたが専ら良くあるからね。もしくは融合する。

 

 神苑天稟の4割は、制約型と呼ばれるものだ。制約型の神苑天稟は、制約が多かったり、代償や負荷が存在していたり、条件が厳しかったりするなど、使い勝手は非常に最悪だが、その分強力になる。接触系は条件が厳しい部類に入る為、強力な事が多い。手似内の様に遠隔殺害が可能であったり、私のように姿どころか存在が捉えられない相手だと接触はほぼ不可能になるからね。

 故に、接触系は制約としては非常に重く、超強力だ。指先でちょこっと触られただけで突然の死を迎える可能性がある。もしくは指差された結果、突然の死。

 だからこそ、鈴一は銃で攻撃しているのだろう。制約型の接触系はマジでヤバい。

 因みに制約型以外の残りの6割は常時型、偶発型、意識型などなど、様々な型があり、更にそこから系統が分けられる。

 私の神苑天稟は制約がある為、制約型……ではない。私の神苑天稟は、不明型である。そもそも結果的に制約となっているだけであって、神苑天稟自体は別にって感じらしい。店長曰くね。でも説明面倒だから表向きは制約型として通している。知ってる人自体少ないけど。


 こうしてダラダラ考えながらも、相手は此方を逃がす気はないのか、瞬きすらせず見ている。見るなよ、恥ずかしいだろ?

 そうして互いに膠着状態……一方は銃口を向けている状態で、突然何かが中瀬と鈴一の間に現れた。

 そして突如現れた何か……注射器は地面に叩きつけられる。


 ぷしゅああああ……!


「は!?」

「え!?」


 ほぼ同時に声を上げる。

 叩きつけられた地面からは勢いよく間抜けな音と共に煙が拡散される。

 とっさに口と鼻を塞いで、煙を吸わないようにする。

 モクモクと煙は瞬く間に広まり、視界が見えなくなる。


……幾ら早く塞いだとは言えども、こんなに煙がある中で咳すらしない?


 どういう訳か、煙とかで発生するような、あの咳が出てこない。

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