第13話 present for you!
鈴一は二発目の弾丸を撃つ。
中瀬はそれをさっそうと避ける。
「やぁーっぱ天授者か。この距離の弾丸を見て避けましたなんざ、一般人には普通は無理だからな。」
距離は30メートルもない。
この距離の弾丸を精確に捉え、尚且つ避けるのは一般人には不可能だ。
もし、それを避ける事が出来るのであれば、それは人外離れした動体視力、反射神経、運動能力を持つ存在。
天授者であるならば、よほど運動が不得意でない限り、これを行う事は可能だ。
「いやぁ。この確認方法、楽だよなぁ。避けたら天授者、避けなかったら死ぬ。手間が省ける省ける。」
「物騒な確認方法だぁ……。」
「裏社会では普通だよ。天授者程厄介な奴はいない。戦闘系じゃなくても、大量虐殺位余裕だからな。……いや、それは一部か?」
「一部ですよ。精々、30メートル弾丸発砲を避けられる位です、普通は。」
「そうかそうか……。ありがとな、ボクの疑問に答えてくれてよ。」
「じゃあ見逃してく」
「殺すぜ。」
「デスヨネェー」
三発目が容赦なく発砲され、それをさっと避ける。
(さて……神苑天稟使いたいけれど、同化している最中に絶対殺されちゃいますよね、コレ。)
【匿名希望】を使えば、逃げ切る事自体は可能だし、それこそバスが来る残りの7分を耐え忍べられるだろう。
しかし、【匿名希望】を使う為には、幾つかの制約がある。
一つ目は眼鏡を外す事。
別に外さなくても使う事は可能だが……鈴一のような裏社会の人間であり、推定天授者であろう人物や、そうでなくても天授者だと予想している相手に単身特攻出来る奴は、眼鏡を外して全力で同化しなければ捉えられる可能性が遥かに高い。
二つ目は時間がかかる事。
世界其の物と同化するのだから、それこそ数秒の時間が必要だ。意識を消すという作業は時間がかかる。むしろ、数秒で意識を消し、世界と同化出来るのだからこれでも早い方だ。
他にも色々あるが……。ともかく、この二つの制約が現状ではかなり厳しい。
眼鏡を外す間に鈴一は攻撃が出来るし、意識を消して同化する間に中瀬は殺されるだろう。
さっきからハンドガンで攻撃してきているが……その気になれば接近戦で殺す事ができる筈だ。
なのにしてこないのは、中瀬の神苑天稟が分からないから。
もしこれが接触する事で発動する神苑天稟だった場合、一気に形成が逆転するだろう。
神苑天稟は基本的に、制約が多かったり、代償や負荷が存在していたり、条件が厳しかったりする程強力になる。
接触型は条件が厳しい部類に入る為、強力な事が多い。
手似内の様に遠隔殺害が可能であったり、中瀬のように姿どころか存在が捉えられない相手だと接触はほぼ不可能になる。
故に、接触型は超強力だ。
指先でちょこっと触られただけで突然の死を迎える可能性がある。
だからこそ、鈴一は銃で攻撃しているのだろう。
そうして互いに膠着状態……一方は銃口を向けている状態で、突然何かが中瀬と鈴一の間に現れた。
そして突如現れた何か……注射器は地面に叩きつけられる。
ぷしゅああああ……!
「は!?」
「え!?」
鈴一と中瀬はほぼ同時に声を上げる。
叩きつけられた地面からは勢いよく間抜けな音と共に煙が拡散される。
とっさに二人は口と鼻を防ぎ、煙を吸わないようにする。
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