第12話外伝(五) 錬薬術士と手品師
先ほどまで沢山の人で満たされていた廃墟の一室は、手似内と赤髪の男、アインの戦場になっていた。
しかし、その光景は、かなり単調でつまらないものと言えるだろう。
「ぽーい、ぽーい、ぽーい!」
「ああクッソ! これだから空間操作系の奴は嫌いなんだよなぁ!」
アインが力を使い、手持ちの注射器を何らかの薬品で満たしていく。
そして叩きつけたり、思いっきり手似内に投げつけようとすれば、すかさず手似内が力を使い注射器を確保する。
しかもその注射器は手似内の手の内に確保されるのではなく、別のところに次々と投げ捨てているらしく、遠くから爆発や光、はたまた煙が撒き散らされる。
「それ言ったら一度作っちゃえばどんな薬も注射器の中に材料なしで再装填できちゃう薬害チートにだけは言われたくなーい!」
「その注射器をぉ! こうやって取られちゃ意味ないんよぉ! あとばらすなぁ!」
「誰も聞いてないよー?」
「聴覚系神苑天稟の持ち主なら十分聞こえるんだよぉ!」
「あっははハハはァー! それもそうだねぇい!」
アインが神苑天稟【錬薬術】で次々と注射器に薬品を準備する。
相手を一定時間動けなくさせる薬、強い衝撃を与えれば
正直な話、一部それは薬でなくても閃光弾で良いのではないかと思える物もあるが、それを薬にする事で注射器さえあれば無制限に使う事が出来る為、物量勝負ではアインが上手だ。
だが、それは使えればの話。
アインの神苑天稟は脅威だ。
しかし、それは、あくまでも注射器を持っているアインであればの話。
空間を自由自在に操作し、空間内に存在しているのであれば人でも物でも瞬時に呼び寄せる事は勿論、消す事すら出来る手似内からすれば、注射器さえとってしまえばそれで終わり。
それに、さっさと空間断絶してアインの体を真っ二つにすればもう終わりだ。
「なぁ。」
それをアインは分かっている。だからこそ、問いかける。
「どうして、まだ殺さないん?」
手似内はその言葉を聞くと、ニコリと笑う。
その笑みを、アインは冷ややかな目線で返す。
あの笑みには見覚えがある。
そう、それこそ、これから死ぬ奴が見る笑顔だ。
あの時の戦争で見た笑顔だ。
あの笑みが浮かべられた後、多くの
「神天者を得る前からの旧友との再会を楽しみたいのと、調査隊隊長でしかないキミとは違って、ちゃんとした対戦争部隊隊員様を舞台に上げる為さ。だってコレを狙っていたみたいだし?」
突然、アインの体は真っ二つになる。
悲鳴すら上げる事も無く、アインは絶命する。
「でももう出てきたから
手似内はその言葉を残し、アインの死体に侮蔑の目線を向けると、スマホを取り出し、何処かへ連絡する。
その連絡が終わると、手似内は忽然と消えた。
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