第三話 『ギア・クロニクル』
「もしかしたら近い内にもその方法が手に入るかもしれないんだ」
「ここからは私がお話ししましょう。こちらをご覧ください」
「〝セット〟」
と、四方が発声すると、端末が光り起動した。そして端末の直上、何もない空間にスクリーンが現れる。そのスクリーンには天体図のようなものが映っていた。
「これは世界の配置図です。たとえばこの世界、
四方が配置図の中の一つの点に触れる。夜空に浮かぶ白い星のようなそれが、青白く光り学園都市世界・月影の文字が表示される。
月影だという星の周りには、いくつもの星々が浮かんでおり、四方が触れると同じように青白く光って世界の名前を表示させた。
これは、まさか。
「月影を含めた世界は、このように異次元の中にそれぞれ独立して存在しています。この配置図はそれを星に見立て、他の世界との距離感を正確に図に表したものです」
「星っていうより、スペースコロニーみたいなのをイメージした方がわかりやすいかもな」
「その辺りはご自由にどうぞ。そしてこちらが」
四方が指したのは、配置図の中で中央に位置する、一際大きな星だった。
「これが
それが、攻輔が言っていた『近い内に手に入るかもしれない方法』。
「『ギア・クロニクル』。そう呼ばれています。それがどんなものなのかはわかりません。ですがこれがあればこの世界のすべてがわかるとされています。もちろん、東埜さんたちの世界に戻る方法もわかるでしょう」
「ギア、クロニクル……」
そんなものが存在するのか。しかしそんな、全知を得られるような代物が本当に存在していて、手に入れることができるのか?
「疑わしいですよね。眉唾物だと言われても否定はできません。確かにあるとは言われていますが、誰も見たことはありませんし、これが必ず手に入る保証もありません。ですが今、世界はこれを手に入れなければならない、危機的状況に陥っているのです」
「えっ!?」
護は再び目を見開く。そこまで世界が追い詰められることなどあるのか? 本当に存在するのかもわからない全知に縋らなければならない状況とは、果たしてどのような状況なのか。
しかし、次の瞬間だった。
突如として緊急警報のようなものが鳴り響いた。スクリーンの表示が切り替わり、赤の背景に黄色の文字で『緊急事態発生』と点滅しながら表示される。
「こ、これは!?」
戸惑う護を余所に、攻輔たちは立ち上がる。
「うへぇ、今夜は多いねぇ」
「こちら
四方はスクリーンに触れ、誰かと会話を始めた。このスクリーンを通して通話も可能なのか。
<こちら
「水鏡支部、了解。ただちに現場へ急行します。現状データの送信をお願いします」
<比々良木支部、了解!>
通話が切れる。それを聞いていた
「比々良木方面ですか。近いですね」
「はい。龍彦さん、
「「「了解!」」」
四方の言葉を受け、攻輔たちは談話室を後にする。そして残された護へ、四方が声をかけてくる。
「済みません、緊急事態が発生してしまいました。こちらへ付いてきてください」
四方に導かれ、護も部屋を出る。向かったのは地下だった。下り階段を降りて辿り着いた部屋は、謎の機械に埋め尽くされた一室だった。
「ここは?」
「オペレータールームです。ここから現場の攻輔さんたちをバックアップします」
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