第34話魔物は討伐した後も大変でした
魔物の姿は多岐に渡る、鳥型でも大きいカラスのような見た目だったり鷹のようなものもいる。
ここ大森林では虫型と鳥型の縄張り争いもあるようだが、私達が狩っている場所は虫型が多いよう・・・ミリーにとっては相性が最悪なエリアとも言える。
ミリーに襲いかかっているのはテントウ虫のような外殻が丸い虫型だが裏側の脚の中心に口のようなものがあり、上から覆い被さるように攻撃してくる。
ミリーは器用にエア・シールドで防ぎつつ、ウインド・カッターで凪ぎ払う・・・一連の行動中終止無言である。
ユラの方はライトニング・バレットを撃ちながら、近づいてきた奴を素手から属性放出させたプラズマブレードで薙払っていた。
ブレウに迫ってきた虫型をルミが魔導術で防御を張り、態勢が崩れた一瞬をすかさず斬り払う・・・隙を突かれる前にトールがフレア・バレットで撃墜。
私とレナはそれぞれ単独での戦闘になっていた、互いに援護するまもなく殲滅しているのだが。
レナの視野は全周囲が見えてるのかというレベルで隙がない、槍に乗っている白く光る魔力もそうだが・・・あのオッドアイに何か秘密があるのだろうか・・・
「改造短剣、シュートッ!」
テントウ虫タイプは溶解液を内包していないのでレーザーブレードを展開した短剣を飛ばしてみる、魔物とはいえ、虫というのはなんでこうどこからともなくやってくるのか・・・・・・
バチィィンッ
無意識で張れるようになっていた全方位バリアーに虫型がぶつかってきていた、近接攻撃対策はこれでどうにかできそうだが・・・蚊に刺されるのとは訳が違うので防げていないと問題である。
ブォォンッ
「凄いねあれ、どうやっているのかな」
レナが独り言のように呟いている、大鎌ブレードで斬り払うのを見ての感想みたいだ。
私的には近接職側の人達の反応動作が凄いと感じるが・・・皆身体の使い方が上手いな。
今のが最後だったらしく辺りはいつの間にか静かになっていた、安全を確認した後、レナ以外もこちらに集まってきていた。
全方位バリアーや大鎌ブレードを見た面々が私に話を聞いてきていた、説明もし辛いのが面倒ではあるが・・・
「ミリーさんやユラさんの魔導術もかなりのものだけど・・・フィオナちゃんのあれって魔導術なの?」
どうやらルミが私に防御を張ろうとする前にバリアーが防いだのを見たようだった、あれに関しては意識と脳波の差を参考にしたものとでもいうべきか。
意識で判断するより先に脳波が発生するのを魔導術的に展開させるといった感じだが、成功したということはこの世界での立証ができたとも言えるか。
例えるなら車の運転に慣れてない頃はアクセルやブレーキは意識するが、慣れると意識せずに動かせる・・・俗に言う無意識下タスクでレーザーブレードやシールドを展開させる。
同様に全方位バリアーを発生させるようにできれば意識判断の前に展開するのではと・・・ルミの聞きたい答えではないだろうがそうとしか説明ができなかった。
「すみません、フィオナは時々意味の分からないことを言うときがあるんですの・・・」
「言い方ぁ・・・意識は現実より0.5秒遅れているのを利用してるだけなのです。でないと私は目視による防御なんて間に合わないのです」
この世界の人達はそれがないんじゃないのかというくらい反応が早い、合同戦のユラにもほぼこれで通用させたと言ってもいいくらいだ。
相手の無意識判断で一切の予測ができない状態でしか、おそらくまともに攻撃が通らない気すらしてくる。
「あんな魔導術を意識すらせずに使う・・・小さな天才魔導師の呼称ってそういうこと?」
レナがミリーとユラの方を見ながら話しかけている、君は視覚外の魔物を斬り払ってた気がするのだが・・・
「・・・私達も初耳だよ、今聞いたから」
「意識する前に展開するなんて聞いてませんわよ・・・術式の構築を意識しないと普通は発動できませんわ」
私もできれば順当な手法で使ってみたかったのだが、結果としては術式で展開するのもイメージで現象を発生させるのも個人的にはあまり違いがないのである・・・
野営装備もなしで遅くなるのも危険ということで、大森林には2時間ほどで帝都に戻ることになった。
大森林の行き来だけでも6時間はかかるので、戦闘より移動時間のほうが長い。
「これだけ狩ればそろそろ俺達もミスリルになれるんじゃねえか?」
「どうだろう、ベンタルミナと虫型素材の量的にまだじゃないかな」
討伐の報告の際は魔物の核にもなっている触媒結晶の素材、ベンタルミナと魔物の部位を持っていきギルドに提出をする。
リアがいるときは空間収納とか異次元のことができた事で済んでいたが、虫型の残骸が入っている大きめの鞄を持つミリーの顔は憂鬱そうである。
トールが代わりに持つと言ってミリーから鞄を受け取っていた、魔導師の割に力持ちである。
「しかしユラさんは刀すら抜かなかったのに強いよな・・・手から雷とかどうやってるんで?」
「・・・多分難しいと思う、魔力の放出のようなものだから」
「魔力って直接放出して属性に変換できましたっけ・・・?」
ユラも今日初めてあった皆と打ち解けているようだ、面識がないパーティーでの戦闘は合同戦以来になるだろう。
今回は魔物が相手だから実戦で即時協力できた・・・とはいってもグループ的にはいつもと大差がなかったようにも見えるが。
その中でもレナの魔力は見覚えのない視え方だった、2つの魔力性質を内包している者は初めてである。
複数の属性を持っているというのであれば、レナ本人が性質を理解できたら双属性のようなことができてかっこよさそうだ。
単純に特殊な槍なのかとも思ったが、背負っている槍からは特に何も視えてはいない、戦闘時でのことからレナ自身の力なのだろうか。
「レナは学院に通っている間にミスリルになったと聞いたのですけれど、どんな依頼をこなしましたの?」
「ディオール大樹の素材回収護衛の手伝いを請け負った時かな、その際大物がでたんだよ」
大樹中心エリアは魔力も使いづらくなる為、ディオール大樹の木材回収は戦力を必要とする。
希少素材と言われるわけだなと、回収の際に大型のムカデがディオール大樹に出現したとのことだ。
「まあそれを倒したのが私ということ、撤退中で倒す瞬間を誰も見てはいないけどね」
近接職はまだ魔力の循環による強化があるとはいえ、1人で留めまで刺したと・・・大物というからには槍捌きでどうにかできるような感じでもなさそうだが。
レナと付き合いの長い友人たちも、レナがどう倒したか知らないようだった。
「切り札はあまりひけらかさないものだよ、フィオナもそうみたいだけど?」
レナの両目が私を見つめていた・・・どうもこの視線は苦手である、魔力の性質を視られてるとも違い見透かされてるかのような目だ。
「・・・そうだね、私とミリーも知らないことを、今日さらっと言っちゃうくらいだし」
残念な事に、その切り札を使う条件が私自身不明瞭なのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます