第31話オッドアイはかっこいいのです
帝都の総合学院は王都と違い剣士と魔導師が一緒の学び屋であるそうだ。
王都の学院は7年通うが帝都の総合学院は8年間・・・1年長い学生生活を送るようだ。
総合だけあって商人育成や基礎教育による一般科枠もあるらしい、王都より生徒数も多く学院がある北東城下町は半分学園都市のようになっているみたいだ。
「帝都の学院も実地訓練はあるのです?」
大森林地帯の虫型対策を試行錯誤しているミリーに話しかけてみる、この様子だと虫型は相当苦手なようだ。
「あるとは思いますけど、王都とは勝手が違うかもしれませんわね」
流石に余所の国事情までは知らないようだった、冒険者のランク基準は変わらないだろうからシルバーランク同行も同じなのだろう・・・
「とりあえず総合学院の歴史の本でも探してくるのです」
「歴史に関する書物は4階みたいですわ」
魔物対策を練っているミリーを誘うのもあれなので1人で4階に向かった。
この図書館は4階建てになっており南西城下町では一番高い建物である。
図書館正面の左斜めにカフェ・フレイアが見え、裏手の方に宿がある。
窓から離れ部屋を見回すとちらほら学院生の姿があった、学院外でも勉強とは真面目だなと思いつつ改めて本を探す。
比較的分厚い本の表紙に総合学院の歴史と書かれてる本を見つけ手近な席に座る。
しかし学院の位置がこの南西城下町と反対側にある事を考えると、図書館とフレイアに来る学生は毎回時間が掛かりそうだ。
直線的には来れないだろうから走っても1時間は必要だろうと、本をひらいたタイミングで学院生達に声を掛けられた。
男子2人に女子2人の学院生のグループのようだが、それぞれ武器を携えている。
図書館の中でも武器の所持は認められているらしい、そういえば私やミリーも武器は携帯したままだった。
話しかけてきたのは長杖を背負った少女だった。
「総合学院の歴史を読んでるってことは・・・君、入学する予定あるの?」
ショートヘアーの少女は私を入学前の子供と勘違いしているようだ、なるほどそういう見方もあるかと思いつつ答える。
「あ、私は王都の学院を卒業してるのです。仲間と帝都に来たので、興味本位で読んでいたのです・・・本だけに」
「え、マジ?学院生とかじゃなくて卒業・・・?」
「王都って王立と私立があった気がするぜ・・・ちなみに魔導学院だよな?」
その見た目だし、盗賊的な輩は少ないが見た目で判断する人は実に実に多かった。
この男子2人に限らずさっきの短髪の子も驚いてるようだが、もう1人のロングポニーテールの少女の反応だけは違っていた。
「君、フィオナ・ウィクトール・・・だよね?」
整った顔立ちで、オッドアイと落ち着いた佇まいがより印象を強く認識させる。
「え、レナの知り合い?」
「入学したときから一緒にいるのに初めて聞いたぜ?」
レナと呼ばれているオッドアイの少女だが、私は面識がない・・・少しだけ短めの槍を背負っているが会っているなら忘れる事はないだろう。
「話したよ、王都の合同戦に凄い魔導師がいたって」
「ああ・・・3週間学院休んでどこ行ってたって時のか、あれ冗談じゃなかったんか」
「空飛ぶ女の子だ、3つ同時に術式展開してた子とか・・・刀で雷放った近接少女だの」
青紫髪の少女レナはどうやら学院サボって王都に来ていたようだ・・・見覚えがないのも当然である。
「少なくとも刀使うようには見えないな・・・」
「王都では有名な子だって、小さな天才魔導師とか空飛ぶ魔導師って言われてるらしいよ」
左目をつむり右の赤い瞳が私へと向けられる、入学時と言うに4人とも同じ学年のようだ。
「総合学院は8年通うと聞いたのですが皆さん何年生なのです?」
「ああ、俺達は7年生だな・・・フィオナちゃんだっけ、同い年には見えないな」
前世で若く見られることもあったが、この世界ではほぼ誰に会っても子供と認識されるな・・・確かに人というのは第一印象で補整が掛かるものではあるが。
この4人の印象は仲がいい幼なじみ感があるな、学院生活7年一緒にいればそうなるだろう。
階段の方にふと視線をやると、ちょうどミリーの姿が目に入るのだった。
戻ってこない私を気にしての事か今の学院生に囲まれてる状況を心配したのか、こちらへと駆け寄ってきた。
「フィオナ、何かやらかしたんですの・・・この子が何かしました・・・?」
どちらでもなく私が問題を起こしてないかが先に出てきた、事態解決したことはあっても問題を起こした覚えはないのだが。
「ごめんなさい、私達から声を掛けたんですよ」
「あ、3つ術式展開してた子」
ミリーがはい?と首を傾げると短杖を腰に下げていた男子学院生がミリーに話し掛ける。
「こ、こんにちわ・・・俺はトール・クロキスっていいます」
少しシャイな感じで名乗っていたが、私の時とは随分と態度が違っていた。
確かにミリーは美人だが、そんなあからさまに態度が変わるのは複雑な気分である。
「私(わたくし)はミリー・シュタッドと申しますわ、総合学院の方のようですわね」
「レナの話じゃ2人とも魔導師・・・なはずだよな?杖どっちも持ってないようにしか見えねえんだが・・・?」
私は実際持ってきてないが、ミリーのフィンガーグローブが杖とは初見で思わないだろう。
「私(わたくし)のはこれがそうですわ、フィオナは・・・」
「私は家に・・・じゃなく宿屋に置いてきたのです」
レナの視線が私の腰に向けられている、魔導師が短剣を持っているのが珍しいのだろうか。
「短剣って、数持てばいいってわけじゃないと思うんだけど?」
数の問題のようだ、ユラも6本がどうと言っていたし普段は2本くらいにしておくほうがいいだろうか。
「俺も剣士だが、6本も研ぐの大変じゃねえか?」
「刃先は外してるので大丈夫なのです」
は?みたいな顔をされてるが短剣の取っ手を見せてみると、更になんでだよという表情になった。
ミリーが複雑そうに私達のやり取りを見ていた、やらかしとはこの事を言ってるのか・・・?
まあ実際使うところを見ないと意味が分からないとは思うが、刃先を覆うように展開する方式にすればよかったかもしれないと今更考える。
「私魔導師だから近接職に詳しいわけじゃないけど・・・流石にこれが変っていうのは分かるよ?」
レナの方に関しては左目を瞑りうんうんと何か頷いている、この子もどこか普通ではない感じがするのだが。
「見た方が早いのです、いつもはこうやって使っているのです」
取っ手からレーザーブレードを展開して、短剣のように使えることを見せる。
「うわ、なんだこれ・・・魔導具・・・にしたってこんな小型のは見たことないぜ?」
取っ手を渡しまだ名乗っていない男子学院生が魔力を込めて出そうとするが、それに意味がないことを知っているミリーが顔をしかめる。
「その取っ手自体に意味はないのですわ・・・フィオナの独自魔導術みたいなものですから」
「あ、魔導術なんだ・・・それにしては術式がでてない気が・・・・・・」
術式云々は正直どうも言いようがないので誤魔化すが、レナの左の青い瞳が私をじっと見つめていた。
同じ視線をどこかで感じたが・・・あれは確かフィアさんの時だったかと考えていると。
「明日、私達大森林の討伐に行くんだけど、時間があれば一緒にどう?」
レナは私達を討伐依頼に誘ってきたのだった。
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