第29話親族経営も大変そうなのです
帝都ヴェルガリアの城下町は4つの区域があり、私達が王都方面から入ってきた東城下町から南西城下町、北西城下町に北東城下町。
帝都中央に皇城があり東側に神殿、西側に闘技場がある。
現在は南西城下町のカフェ・フレイアにて食事中であるが、配達から帰ってきたノアのお姉さんから一瞬だが警戒されてしまったのだった。
「ど、どうしたのお姉ちゃん?確かに今日初めてきたお客様だけど・・・」
スタイルのいいお姉さんだが、つり目で少し冷たい印象を感じる。
「いえ・・・すみません、初めてのお客に失礼を・・・」
ミリーを始め皆の顔がきょとんとしていた、ただしアイリはマイペースにステーキを口に運んでおり気付いてもいなかった。
お姉さんの視線はリアに向けられた気もするが・・・ちなみに窓側にリアと私にアイリで、向かいにミリーとユラが座っている状態だ。
私はパンケーキを食べながらお姉さんとリアを交互に視線を送った後、お姉さんの隣に立っているノアを見比べてみる。
結論だけ言うなら似ていない、姉妹にしてはかなり印象が違うが・・・性格が正反対といった雰囲気ともまた違う。
「申し遅れました、僕はフィア・レイジスといいます。驚かせてすみません」
見た目に反してと言うと失礼だろうが、女性で一人称が僕というのは珍しい気がする。
「このカフェは家族で経営しているのですね、お昼時とか忙しそうなのです」
カフェ&レストランなら昼間が忙しそうだなとつい口にしてしまったが、前世の乗りで言ってしまったかもしれない。
異世界でサラリーマンなんていないだろうから、必ずしも昼が忙しいと決まったわけでもないだろう。
「昼は結構忙しいんですよ~帝都の北にある大森林地帯や多方面での討伐帰りの冒険者さんも利用してくれるので~」
なるほど、確かにこの美味しさなら一仕事終えて食べに来たくなる気持ちは分かる。
ふとフィアさんの方に視線を向けたら目が合ってしまった、ノアは他のお客の応対で私達に一声掛けた後に離れていっていた。
「もうフィオナ、口元が汚れてますわよ」
パンケーキのシロップが口に付いていたようで・・・ミリーが手拭いで拭いてくれた。
カフェ・フレイアは7時までらしく閉店まで厄介になってしまっていた私達だった。
「すみません、長居してしまって・・・フィオナはいつまで食べていますの・・・」
思いのほか量が多く感じたパンケーキを食べるのに時間をかけてしまっていた、考え事をしながらでフォークが進んでなかったのが要因ではあるのだが。
「ゆっくりで大丈夫ですよ、初めてのお客様でノアとフィアがこんなにお喋りしてるの初めてだわ」
ノアと同じ緑髪の女性が厨房から出てきて声をかけてくる、これは間違いなく親子だなと思っていると。
「うむ、このパンケーキなるもの大変美味であった。これは病みつきになるのう」
「ステーキもおいしかった!」
ここをおすすめしてくれた龍人の女性も多分ここの常連だったりするのだろう、気になるといえば・・・
「初対面で失礼かもですが、フィアさんは義理の娘さんだったりします?」
ノアもレイジスとのことで、やはり家族ではあるだろうが、厨房にいる父親の方とも似ていないことでつい余計な事を聞いてしまっていた。
「フィオナ、いきなりは本当に失礼ですわよ・・・」
「いえいえ、帝都の常連さんは知っている事なので、フィアは17年前に養子に迎えまして」
私とミリーにユラが生まれた頃のようだ、フィアさんの見た目は20代前半くらいのように思える。
不必要に人の過去を詮索するのも無粋かと、ノアが話を降ってくる。
「みんな冒険者としてこの帝都に来たんだね~その子フィオナちゃんだったよね、一緒に連れてきて大丈夫なのかな?」
最後の一口を食べ終えふと周りを見る、やはり私は冒険者枠に見えないよう・・・単純に武器も所持していないというのもあるが。
「・・・フィオナはこう見えて、私達と同じゴールドランクの冒険者だよ」
ノアにユラが答えると少し驚いているようだった、杖も手元にないから姉に付いて来た妹にしか見えなかったのだろう。
「ご、ごめんなさい~てっきりお姉さんと離れるのが嫌でついてきたのかと・・・」
時が経つにつれ肉体もそれなりに成長するだろうと思ったが、寧ろどんどん周りと年が離れている状態になっていた。
「王都から来た冒険者が話してたけれど、ミリーさんとユラさんは去年の合同戦で勝利したパーティーでいいのかな?」
清掃を終えたフィアさんが話に混ざると合同戦の時の事を聞いてきていた。
あの時点では映像投射器はまだ出回っていなかったから顔までは知られていないはずだが、ミリーとユラの武器で気付いたのだろうか。
私に関しては普通に負けているのと、アイリは一瞬で終わらせすぎて印象が少ないみたいだ。
「試合という意味では勝利ですけれど、去年の合同戦は基準もかなり変わっておりましたわね」
「・・・ほぼ王立対私立になってたからね」
あの時の教訓で近接職用の防御法を試した事があったなと振り返る。
まともに攻撃を受けたら普通に死ねるので、全身を覆うバリアみたいなのを思案したが・・・今の所出番はなかったりする。
「・・・王立の魔導師もミリー以外フィオナに倒されたからね、私も一本取られたし」
「え?その子が王立の学院生と君を・・・?」
フィアさんが凄く驚いた顔をしている、見た目で判断する人には思えないのだが少し傷付く・・・その視線はリアと私を交互に見ているようだ。
「少々長居してしまいましたわね、どこかおすすめの宿はあります?」
「あ、皆さんは帝都にしばらく滞在しますか~?」
ノアが宿を知ってるようだが、滞在期間も特に決めてはいないと皆と顔を合わせる。
「とりあえずは1年くらいを見積もるといいかもですわね、長期的に借りられる部屋があるといいのですけれど」
「あら、それなら私の友人がやってる宿があるから紹介状書きましょうか?」
どの世界でも人脈は重要だなと再確認するのであった。
紹介された宿は同じ南西城下町内で、カフェ・フレイア目と鼻の先にある三階建ての宿屋だった。
手前に民家が並んでおり、横の通りから2軒過ぎた辺りの右手に建っているが、横の通りを北に進めば闘技場の方に出るみたいだ。
五人全員で1部屋は流石に狭いだろうからと、2部屋用意してくれるという話しみたいだ。
「ふむ、この位置ならフレイアにも直ぐに行けるのう」
リアはフレイアが気に入ったようで、帝都に来て1日も経っていないが常連の仲間入りを果たしたよう。
「長期的な利用ということで3階の2部屋だそうですわ、あまり夜更かしはしちゃだめですわよフィオナ?」
私だけ名指しなのは少々気になるのだが・・・この世界では寧ろ規則正しい生活をしているはず。
「こっちの通り行くとどこにでるんだろう?」
「・・・闘技場らしいよ、その闘技場の横を更に進んだら北西城下町みたい」
王都もそうだったが、帝都も城の隣に闘技場が建っている、魔物もいる世界だからなのか単に皇帝や国王の趣味なのか・・・
「今からギルドに行くのも時間がかかりそうですわ、今日の所は休みましょう」
ギルドは東城下町側にあるみたいだが、フレイアで思ったより長居してしまった・・・まあその件については。
「王様や皇帝には申し訳ないのですが、アーシルに向かうのはしばらく様子を見た方が賢明だと思うです」
「・・・何の準備もしていないしね、周囲の環境も調べてからがいいかも」
最初の帝都での行動は、喫茶店で食事をしただけなのであった。
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