第23話呼び出されました
この世界の生物は様々で野生動物や魔物もそのカテゴリーではあるだろう。
人族や獣人族はどのカテゴリーに入るかと言われると答えようもない、前世で原始人と類人猿と現代人が同じかと聞かれるようなものに近い。
進化論や創造論のどちらが正しいかなど、見てきたわけではないから私には見当もつかないが。
アイリについて来た霊狐は幻獣と呼ばれてるが動物かと言われると少し違うようだ。
リアの話ではコーザル領域の根源から発生した存在・・・精霊や妖精に分類できるのかもしれない。
「アイリさんは固定でパーティーを組んでいないみたいですわね、私(わたくし)達が卒業した後に誘ってみてはいかがかしら?」
「・・・合同戦の強さを見て周りが躊躇してるんだと思う、ただの推測だけど」
アイリはフレンドリーで接しやすいが、パーティーで一緒にとなると付いていけるかどうかで固定パーティーとして誘う人がいないようだった。
「姉様みたいな性格でもぼっちになることもあるのですね・・・天才が孤立になるのは世界の法則か何かなのです?」
ミリーもユラもここに入り浸っているが他の人達と特別親しくなってるわけでもない、単に一度できたグループに交ざりにくいだけか2人の存在感故か。
「・・・何か含みがある言い方に聞こえる」
「それは私(わたくし)達に言ってたりしませんわよね?だとしたらフィオナもその1人ですわよ?」
別にぼっちじゃないし、それに私のはこの世界の領域の力である以上、個人の能力とは言えない。
純粋な実力では3人に及ばないだろう、とは言っても親友と家族とやり合うわけでもない・・・心強い事なのは良きである。
「ミリーはいいのです?王女様が冒険者になるなんて話、前例はあるのですか?」
「私(わたくし)が最初の前例となるだけですわ、前例とは得てしてそういうものではなくて?」
それを言われるとそうなのではあるが・・・王家の人間がわざわざ冒険者稼業に殉ずる必要はなさそうだが、それがやりたいことであるなら止められないだろう。
「・・・2人はギルドランクどのくらいだったかな?」
「私(わたくし)はゴールドですわね、フィオナがミスリルでしたわね?」
「あ、それはジオの時なのです。私もゴールドなのです」
1人だけややこしいですわ、何度かジオの登録解除をしようとしたらジオへの依頼があってタイミングがなかったのだった。
「・・・ランクの統合とかはしてもらえないの?」
「ギルドの二重申請も前例はないのですわ、本来やる意味ありませんもの」
前例がどうと私が言えることではないのであった。
冒険者ギルドは王都クロウディル以外にも各国に設立されており、どの国で登録してもランク通りの依頼を受けることができるみたいだ。
王都のギルドの依頼でのゴールドランク以上になるのは時間が掛かり、上を目指す冒険者は他国に渡っていくことが多い。
ギルドランクを証明するギルドカードは手の平サイズくらいで、表に刻印で追加していく方式のようだ・・・私は2枚持っていてたまに間違いそうになる。
「・・・例えばだけど、他国でフィオナが鎧装備してない時にジオのカードだしたらどうなるの?」
「フィオナはその国でジオという名前で通す・・・で済めばいいほうですわね。その見た目でミスリルは疑われる可能性もありそうですけれど」
カードを偽装して高ランクの依頼を受けても、死ぬ可能性が上がることであまり例はないらしい・・・報酬がよくとも上のランクの討伐依頼など単に危険度が増してしまうからだろうか。
「・・・カードの裏側の名前と登録日、フィオナの年齢でバレない?」
「サブアカで本気を出すのはやめとくべきなのです・・・」
「フィオナは時々変な言葉使いますわね・・・大人しくフィオナ自身のカードでランクを上げるべきですわ」
特に意識して上げる気はないが、こういうのはなんとなく上げてしまいたくなるもの。
冒険者での生活ならゴールドで十分暮らしてはいけるが、高ランクの討伐依頼で一気に稼いで遊んでいる人もいるかもしれない。
「元々は冒険者登録早めるために取った手段なので・・・皆と一緒ならジオの鎧も使う必要はないのです」
アイリがパーティーに加わってくれれば前衛2人、後衛2人でちょうどいいだろう。
「ふむ、冒険者はいつの時代も変わらんものじゃな」
私があげた串焼きを齧りながら昔を思い浮かべているようだ、ランクを上げたり討伐したりはいつの時代も同じらしい。
時が過ぎ学院の卒業試験も終わり、後は卒業式までの期間をどう過ごそうか考えていた矢先・・・
「王城まで足を運ばせてすまないな、冒険者ジオ殿」
私はここ王様の謁見の間に呼び出されていた、立派な装飾が施された椅子に腰をかけている金髪で髭を生やした目力の強いこのお方は国王様みたいだ。
国王様の隣の椅子には王妃様もいらっしゃるよう・・・その両隣の若い男女も同じ金髪であるところを見るとミリーの兄妹だろうか、王族勢揃いのこの状況はいやでも緊張してしまう。
「一介の冒険者をお招きいただき、光栄の極みにございます・・・」
国のトップ以前に企業の社長とすら話した経験などもなく、偉い人との会話に戸惑っていると国王様の斜め前にいた騎士が話を続けてくれた。
「ギルドから報告は受けていますから、緊張しなくてよろしいですよ」
「うむ、娘と仲良くしてくれているようで感謝するぞフィオナ・ウィクトール」
そういえば上の方にはジオとフィオナの状況は知られているのだった、この場には他の近衛騎士団以外に人はいないようだ・・・事情を知っているのならジオで呼び出さなくともいい気はするのだが。
「ミリアから話は聞いているけれど・・・本当に同一人物には感じられないね」
「そうですね・・・小さくて可愛い子だって言っていたけど・・・さっきの男性の声を聞くと・・・」
少女であることを悟らせないためにやっている低周波による声質の効果はバッチリのようだ。
「すまないが実際の声で話してもらってもよろしいかな?娘からの話とギルドの報告からの印象が違いすぎてな」
「あ、はい・・・・・・これでよろしいでしょうか?」
ボイスチェンジャーを外すような感じで声を戻し普段の声に戻すと、この場にいた人達が揃って驚いているようだった。
「ほう・・・キルスからもこんな魔導術があるなんて話は聞いておらんからな。噂に聞く小さな天才魔導師は伊達ではないということかな?」
「あらあら、可愛い声ですわね~」
王妃様が微笑みながら感想を述べる、ミリーの話し方は王妃様譲りなのだろうかと・・・私は呼び出された理由を聞いてみた。
「私がこの場に呼んでいただいた理由をお聞きしても・・・?」
「うむ、娘が冒険者になるという話は存じておるな?合同戦で実力の程は拝見したが・・・やはり心配ではあってな」
仮にも王女の身で冒険者になるのを気にしているようだ、共についていく人間の実力を確認・・・は既に知っているともすれば、引き留めてほしいという感じだろうか。
あれこれ思考を巡らせていると、騎士の方が話を引き継いだ。
「実力を疑うというのではなく、その・・・フィオナ・ウィクトールとジオの違いが気になってしまってね。第三騎士団からも話を聞いたのだけど・・・我々近衛騎士団の方でも一度立ち合ってみたいとなってね」
その結果、王家の眼前で近衛騎士副団長との仕合をこの謁見の間で行うことになるのであった。
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