十一日目

「最近は外出てなかったから、こういうのもいいな。」

私は久しぶりに散歩をしている。

「目的もなしに外に出るのって、なんだか余裕を感じる。」

今日は晴れといっても、快晴。

気温はものすごく高いが、逆にいい汗が流せる。

「あ、どうも。奇遇ですね。」

身長は高いが、柔らかい雰囲気。

好きな人と外で会えた事実にか、その柔らかい雰囲気にか。

私の心臓は高鳴っていた。

私と出会えてよかったって思ってもらえたらな。

声も少し変えて、魅力のある女の子になっちゃおうかな。

「う、うん。たしかに奇遇ですね。」

低い声ってあんまり得意じゃないけど、低い声の女の子って魅力的っていうからついやってしまった。

「この暑さで外に…」

高田くんはポケットをいじっている。

「これ…!」

高田くんの手に小さい袋が乗っている。

「飴玉…?」

肌にくっくつ衣類から、夏を感じる。

「のど飴です! 声の調子があんま良くなさそうだったので!」

雰囲気だけじゃなくて、性格も綺麗。

「ちょっとまって。」

心のざわめきをおさめるために止めたのに、ざわめきが強くなっている。

「キザな行動して、すみません。今日のことは忘れてください!」

ちょっとまってよ。

行ってしまった。

夏の暑さで溶ける言葉も、夏の暑さで出る汗も全部。好きではなかったかも。

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