十日目
「頭が痛い……」
久しぶりに、風邪をひいてしまった。
「多分、三日はこの調子だな。」
あまり体が強くない方だから、風邪でも長引いてしまう。
「……うん? 誰だろう。」
スマートフォンが振動している。
振動からして、電話だろう。
「……非通知設定か。こういうのって、少し怖いな。」
おもむろに電話に出る。
「……はい、愛月です。」
気だるいんだろうなって思われてしまうけど、はっきり喋れない。
「大丈夫ですか! なにか買ってきますか!?」
焦っている、男の人の声。
私の意識が、唐突にはっきりした。
急に声をかけられたからではないだろう。
「高田くん、落ち着いてください! なにも買わなくていいです……」
咳が止まらない。
高田くんに、こんな姿。
恥ずかしい。
「俺なんかでよければ、そちらの家に伺いましょうか?」
なんで、こんなに焦っているんだ。高田くん。
というか、家って。
「来ないでよ……」
好きな人を家にあげる時ぐらい、可愛い自分でいたい。
だから、今じゃない。
「嫌っすよね…… わかりました。お大事に!」
ちょっと。
私の部屋は静寂の空間になった。
勘違いされちゃった。
誤解をときたいし、あと。
「もうちょっと、喋りたかった……」
さっき測った時より、熱が上がった理由は分かりそうで分からない。
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