九日目

「愛月さんだ!」

声の主らしき人物にピントを合わせると、絶句せざるを得ない光景が広がっていた。

「なんで、手を繋いでいるのですか?」

高田くんと橋川さんの手が触れ合っている。

それは、目が覚める原因になった。

「友達だからだよ! 違和感を覚える?」

男女が手を繋いでいるという光景が、なんでもない日常であるわけがない。

高田くんを橋川さんから離さないと。

高田くんに恋愛感情を持っている自分が、高田くんと橋川さんが付き合っているという話を耳にするというのは絶望という言葉が合う。

「そんなこと……」

いや。いくら好きだからといって、それが二人の仲を引き裂く理由であってはいけないよな。

私が高田くんと橋川さんの仲を引き裂くということは、二人にとっての当たり前の日常を殺すことに変わりない。

「ないよ。一緒にいきましょう。」

橋川さんの笑った顔が心臓を揺らす。

「驚くと思ってたのに……!」

高田くんが、少し呆れた顔をする。

「というか。驚かせることができたとしても、意味ないと思うんだけど。」

どうやら、驚かせたかっただけみたい。

だとしても、高田くんと触れ合いすぎ。羨ましい。

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