六日目
「うん。少しだけ筆がかすれちゃったけど、上手く書けた。」
書道の授業はとても楽しい。
私は書道を習っていて、実は段位だったりもするのだ。
「作者さんは、自分も書道の段位だってことをメタ発言で自慢したいのだろう。でも、そんな設定を私につけて覚えていられるだろうか。」
ひとりごとを吐きながら、上手くできた作品を見る。
やかましい。高田にもっと怖がられてしまえ。
あ、その方が設定的に楽だからってことね。そんな怖いこと言う人ではないよ。う、うん。動揺してないです。
作者だからどうとでも言えるという特権を使うけど、この世界のみんなは作者みたいな人がタイプです。
「作者、早く物語を進めたら? 俺、愛月と話したいんだけど。」
高田さんと愛月さん、あつあつですね。
それではメタ発言を終了します。
「愛月さん、少しお時間いいですか?」
高田くん、どうしたんだろう。
というか、悲しいな。
今の私はどう考えてもお時間いいでしょう。
いや、これは敬語をやめてほしいって正直に言うところじゃないかな。
「高田くん。そういえば、私たちはなんかあったわけでもないのにお互いに敬語ですよね。」
高田くんの苦い顔から、私が痛いところをついたのだと察した。
「どのぐらいの距離感で接したらいいかとか分からなくて、いろいろと恐れ多かったので。」
その時、私の中でなにかが限界を迎えた。
「高田くん。敬語、やめようよ。君のことが好きな人として、むず痒い。」
あれ。
今、普通に好きって口に出したよね。
あ、言っちゃった。
「……ありえないとは思うんですけど、もし恋愛関係としてだったら返事考えますよ?」
思うように口が動かない。いや、どこかで口を動かしたくないって思っているのかもしれない。
高田くんの緊張の糸も解けないまま、告白するなんて悔しい。
もう告白してスッキリしたいけど、怖がられてる状態で告白なんてした暁には二度と話せないかもしれない。
「…そんなの嫌だ。」
高田くんが微笑んだ。
「愛月さんは僕なんかより素敵な男性が方がお似合いですからね。」
高田くんに勘違いされてる。
「そういう意味じゃなくて…… とりあえず明日にこの言葉の意味を全て話すから勘違いしないで待ってて。」
酷い女と思われるくらいなら、明日にでも告白しよう。
「感情の情のバランスいいですね。俺の感情のバランスどうですか?」
高田くんが持ってる半紙に目がいく。
「…なんて、なんかすみません。長話もあれなので、失礼します。」
高田くんは半紙を提出するべく教卓へ向かった。
彼と私の持っている感情はなにか同じようで、なにか違くて。
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