三日目

「クラスメイトとカラオケとか久しぶりだな!」

カラオケボックス特有のこの耳の感覚が懐かしい。

「結局、六人しか来てないけどね。」

何気ない会話と並列して行われる、なんとなくの席決め。

「高田くん、よろしくね。」

男子は右側、女子は左側から座っていった結果は高田くんと橋川さんの間だった。

「は、はい!」

よそよそしくしないでいいのに。

「俺、最初歌うぜ?」

戸田さんはそういうと、電子目次本を手に取った。

「高田と愛月さんは全員分の飲み物をお願い出来る?」

橋川さんが二人の時間を作ろうとしてくれている。

二人の状況を作ろうとしてくれて、ありがとう。

だけど。

「いえいえ! 愛月さんは座っててください! 戸田、飲み物ぐらい取ろうぜ。」

この様である。

「面倒くさいな。愛月といけ! 愛月と!」

心が痛い。せっかくチャンスをくれたのに。

「『私と高田くんじゃ駄目?』って聞いてみればいいんじゃない?」

内緒話は耳がくすぐったい。

それなんか恥ずかしいんだけど。

でも、距離を縮めるためだ。

「高田くんは私とじゃ駄目なんですか?」

高田くんは身体を強ばらせている。

「決して、そういうわけではないです! では一緒にいきましょう。」

二人っきりの時間だ。やった。

いつか二人ででかけられたらな。なんて。

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