第58話 早く帰ってイチャイチャの続きを

「あぁ、力が……溢れる。漲る」


 リュカオンはかつてマーウィンだったものを一心不乱に貪った結果、


 リュカオンの肉体は赤黒く変容した。


 この姿は原作のフォーチュンラバーで見たことがない。


「なるほど……これは本腰をいれないとダメみたいだな」


 しかもマーウィンを取り入れた結果、どのような挙動をするのかまったく読めない。


 だから今回の展開はイレギュラーなのだ。


「とはいえ、倒す敵ということには変わりないからな」


 リュカオンは俺を見て、ニヤリと笑う。


「もっと遊ぼうぜ」


「っ……!!」


 俺は全力で防御魔法を張る。


「ヒャッハー!!!!!」


 一見すると単純な物理攻撃。だが純粋な魔気を帯びたことによってその火力を上げていた。


「チッ……!」


 俺はリュカオンの攻撃に対して後ろに飛んで衝撃を逃がした。


 完全に受けきることもできるが、この場に留まって攻撃を受ける方が危険だと判断したから。


「肉体強化」


 俺は全力で肉体強化の魔法を展開しバフをかける。


「もっともっと遊ぼうぜぇぇぇえええ!!!」


 ファウラスは追撃をしてくる。その右手に闇魔法『ダークリーパー』を纏い、連続で攻撃を仕掛けてきた。


 俺は『肉体強化』の魔法と共にルナから受けた全能力強化オールエンチャントを重複バフのおかげで全攻撃を避ける。


 しかし、


「う、うわぁぁああああああ!!!」


 ファウラスはリュカオンが放ったダークリーパーの流れ弾を受けて、身体が消滅した。


 しかし、今は誰かのことを気にしている余裕などない。


 攻撃を避けると同時に、攻撃後の一瞬の隙を逃さず、攻撃を丁寧に物理的に当てていく。


 それでも続く攻撃にボディブロー、右のハイキック、顔面へのストレート、膝蹴りを1秒の間に攻防として繰り出しているのだが……カウンターの攻撃は明確に効いているようには見えない。


 いや、正しく言えばダメ―ジは与えられているのは間違いない。だがファウラスの肉体は赤黒く変容したせいかダメージの通りが悪いのと、戦闘でハイになっているのか止まりそうにない。


 俺は前蹴りと同時に距離を取る。


「ウインドカッター、クリムゾンキャノン、アイスランス」


 その距離と共に3属性の魔法陣を展開し、攻撃を放つ。


 リュカオンの顔は鮮血にまみれながら、叫ぶ。


「おいおい、そんなもんかよ……足りねぇよ!! もっとこいよ!!」


 しかし言っている間に、魔気がファウラスを包み込む。


 どうやら肉体的なダメージは回復しているように見えた。


「安心しろよ。こんなんで終わる訳がないだろ?」


 防御が破れないなら、破るまで攻撃するまで。


 その能力だって限界があるだろう?


 俺はルナのためなら辛抱強くだってなれるんだ。やってやろうじゃないか。


「ウインドストーム、クリムゾンミサイル、アイスブリザード、メテオインパクト」


 俺はさらなる魔法を展開する。


「ぐ、ぐはははははっ!! いいぞ!! この魂が削られていく感覚!!」


「まだまだ!!」


 俺は1000を超える魔法陣を展開し、射出する。


 しかし状況は変わらず。俺は新たに魔法を展開しながら、マナポーションを飲む。


 まだ魔力切れにならないと思うが、長期戦を予想しての行動。


 いいだろう。やるなら徹底的にやってやる。


「ホーリーエクスプロージョン!!」


 聞き覚えのある声と共に、光の爆発がファウラスを包み。


「アイク様……!! 私もアイク様と共に戦います!!」


 上空からルナが俺の隣に降りてくる。


 ルナは前に魔人化した魔王崇拝者と戦った時、同様。


 天使の翼を生やしていた。


「ルナ……どうしてここに?」


 俺はルナに尋ねる。


 本当なら今は王城の中で聖女と共にいたはず。


 それなのに、戦闘中の――それも得たいのしれないやつと戦っている最中に……正直、ルナの身が心配というのは変わらない。


「私、アイク様と一緒にいたいってずっと思って、そしたら、この姿になって……それでアイク様が大変な思いをされてるって感じ取れたのです」


「そうか。それは心強いな」


 それと同時にまだまだ精進が足りないなとも思った。


 妻を心配させているようじゃ、夫として三流。


 もっと頑張らなければ。


 でも、まずはその前に、


「くそっ!! 痛ぇ!! なんなんだ!! てめぇ!! 俺とアイクの楽しいダンスを邪魔しやがって」


 リュカオンはルナに向かって叫ぶ。


「エンチャント――『聖属性付与』。アイク様、早く帰ってイチャイチャの続きをしましょう」


 俺の全身にルナの想いが流れ込む。


「それもそうだな」


 俺はルナの腰を抱きしめる。


「という訳で第二ラウンドを始めようか」


 俺は誰にも負ける気がしなくなった。

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