第53話 勝てる勝負にしか乗らない
「大変です!! ファラウス王子が脱獄しました!!」
近衛兵の声が玉座に響く。
「なんだと……? ちっ……! このタイミングで?」
オベロンは困惑の表情を浮かべる。
たしかにあまりにもタイミングが良すぎる。魔王崇拝者の討伐会議のタイミングを狙ったかのようにもみえた。
少なくとも王宮内にファラウスに協力者がいる。
ファラウスは王子なのだから、その配下がいてもおかしくはないが、あえて脱獄までするくらいなのだ。間違いなく不穏分子な存在であることはたしかだろう。
「一体、あいつは何を考えているのだ!!」
オベロンは声を荒げる。それもそうだろう。
冷静な振りをしていても実の息子が脱獄という問題を起こしたのだ。だたでさえ
「すまないね。少し感情が乱れてしまったようだ」
「構いませんが……オベロン王。良ければ私がファラウス王子の行方を追っても?」
「構わないが……魔王崇拝者の件は大丈夫なのか?」
オベロンが心配そうに俺を見てくる。
「大丈夫です。むしろファウラスを追うことで問題に解決するかもしれないですから」
「まさか……!! ファラウスが魔王崇拝者と……?」
「あくまで可能性ですよ。少なくともオベロン王に対して悪意に近い印象を持っているのはたしかです。そのファラウスがもしも魔王崇拝者と繋がっていたら……?」
「そんなことがあるのか? たしかにファラウスと余の考えが合わないと思う時もあると思っていたが、まさかそこまで?」
オベロンは俺の推測に対して心当たりがあるようで、動揺を隠せないでいる。
「敵の敵は味方ですよ。オベロン王」
俺がそういうと、オベロンは頭を抱えてため息を吐く。
「そうか。それではファラウスはアイク君に任せよう。しかし、どこに行ったのか宛てがあるのかい? アイク君はこの『スピカ』に来て日が浅いはずだよね?」
「実は決闘をしていた時に
原作のフォーチュンラバーではエルフ王国の誰かが火種となっていた。
つまり誰が魔王崇拝者となっている。
「あの唐突に始めた決闘の中で……? 恐ろしいな君は?」
オベロン王がひきつった笑みを浮かべているが、今は気にしている場合ではない。
「ともかく、俺がファウラスを捕らえてきます。いいですね?」
「あぁ、そこまで言うのなら宜しく頼むよ」
「承りました。大いに期待してください」
俺はニヤリと笑う。
よし。これで、エルフ王国に貸しを作ることができる。
俺は勝てる勝負にしか乗らないのだ。
俺は龍星の杖を構えて、魔法陣を展開する。
「集中――
俺は二つの魔法を複合的に使用し、元々マーキングしていたファラウス王子の位置を割り出す。
今のところ移動しておらず、そこに留まっているようだ。
だとしたら話は早い。ささっと終わらせてルナとイチャイチャする時間を確保しなければ。
俺は自身に肉体強化の魔法をかけて、全速力でマーキングした対象の位置に向かう。
宛先はビンゴのようだ。原作のフォーチュンラバーで見た。あの風景そのもの……どうやら、ここが魔王崇拝者の拠点のようだ。
「それじゃあ、失礼致しますよっと……!」
俺は肉体強化の魔法を重ね掛けする。そのまま速度を維持したまま魔王崇拝者の拠点に張られている防壁を物理的に突破する。
「よぉ、ファラウス王子さん。こんなところで奇遇だな」
俺は悪役のようにニヤリと笑う。
ファウラスは驚愕の表情を浮かべているが……、
おやおや、見知った顔が何人か見えるじゃないか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます