第51話 異国で過ごす二人の夜
「アイク様はどこでもすごいんですね♡」
俺とルナの二人はエルフ王国の王宮にあるとある客室をのベッドで手を繋いで寝ころんでいる。俺達は夫婦だから……と配慮をしてくれて、この空間には俺とルナの二人しかいない。
二人しかいないからこそ、食事を済ませた後に俺とルナは好きに過ごさせてもらった。
ちなみにアリサとマーシャ姉は二人で部屋を使うことになっている。なんでも一人だとさすがに退屈だから……そんなことを言っていた。
「どこでもすごい……か」
「えぇ、どこでもすごいです♡」
ルナは寝ころんだまま、俺に微笑む。
水浴びしかしていないはずなのに、バニラのような良い匂いがする。
これが噂に聞くフェロモンというやつなのだろう。
つまり生物的に見てもルナが良い女ということは間違いない……ということなのだろう。
「嬉しいが、俺はどこでもすごくしようとしている訳ではないぞ」
「え?」
俺の返しにルナは驚いたような顔をする。
ルナは驚くと目を少し大きく開けるから、そんな表情もとても可愛く見える。
「俺がすごいといようと思える場所はルナの前だけなんだ。俺はルナに……好きな人にすごいとさえ思ってくれればなんだっていい。な? 尊敬なんてできないだろ?」
結局のところただの見栄だ。
好きな人に良く見られたい。ただそれだけの理由で頑張っているだけ。
「そういうところもずるいのですけれどね」
ルナは口を可愛く膨らます。可愛い。
ずるいのは一体どっちの方だと思っているんだ。
「そんなことをしなくても、私はアイク様しか見ませんよ♡」
「そう言ってもらえると嬉しいよ」
元々悪役としての待遇から考えたら、今はものすごく幸せだ。
本来ならば、俺もルナも悲運な結末を辿る。
そうならないために頑張っているとはいえ、悲運な結末にならないという保証はない。正直不安なのだ。
「むしろアイク様には他の誰かの評価なんて気にしないほしいです。私だけをみて私以外考えられないくらい、私だけで満たされてほしいんです。一生お世話をしますし、アイク様といられるならなんだってしますよ♡」
「ははは……それも幸せかもな」
その代わり、全部ルナに依存してしまうから生きていけなくなってしまうかもしれない。
だけどそんな俺をルナは好きになるのだろうか?
ルナの言葉をそのまま受け入れてしまえば『メスは黙っておっぱい捧げればいいんだよぉ……!』と言って嫌われていた原作通りのアイク・ハンバルクとなにも変わらない。
「でも俺だって未熟だからさ……不満とか気になったことがあったら言ってくれ」
「アイク様に不満なんてある訳ないですよ」
ルナは笑って、そんなことを言うものだから。
「ほんとに? 本当に俺にやってほしいことはないの?」
俺がそう尋ねると、ルナは申し訳なさそうに言う。
「実はあるんですけど……言っても、大丈夫ですか?」
「もちろん、言ってみて」
「それでしたら……」
ルナは上目遣いで言う。
「もっと、アイク様と『イチャイチャ』をしたいです」
可愛すぎか!!?
いいよ!! 気が済むまでやってやるよ!!
「の、望むところだ」
俺はそう言って、ルナの身体を抱きしめる。
ルナはいつもと変わらず柔らかい。ただ抱きしめたせいか、ルナの放つバニラのような甘い匂いが濃くなった気がした。
「ありがとうございます♡」
俺はそう言うルナの頬にキスをする。
俺とルナは少し見つめ合った後、ルナはお返しとばかりに俺の頬にキスをした。
ルナのキスは柔らかくも、湿り気があった。
ルナは俺に微笑んだ後、
「今夜はずっとこのまま……」
そう言ってルナは俺を求める。いや、ひょっとしたら俺からルナを求めていたのかもしれない。
そしてそのまま、ルナの望んだ『イチャイチャ』をして二人で夜を明かすのだった。
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