第46話 リコリスからの依頼


「先日の魔王崇拝者の功績、お見事でした。お祝いするのが遅れて申し訳ありませんね」


 ここはエルフ王国のリコリス第三王女に貸し出しているスイートルームの一室。


 俺はリコリス第三王女に呼ばれたため、ここに訪れることになった。


「とんでもございません。リコリス第三王女様」


「リコリスで構いませんわ。一々、第三王女なんて付けていたら大変でしょう」


「お心遣い感謝致します。それでは恐れながら、今後はリコリス様と呼ばせて頂きます」


「えぇ、頼みますわ」


 俺とリコリスはメルコットが淹れたお茶を啜る。


 有難い申し出ではあるが、リコリス相手貴賓きひんであることには変わりない。


「それでアイク様。突然お呼びたてして申し訳ございせん。実は今回お呼びたてしたのは折り入ってのお願いがあってのことなので」


 エルフ王国第三王女直々のお願い。


 この願いに応えることができれば、国内だけじゃなく、海外にも基盤を作ることができる。国内で何かあった時のリスクは分散できるだろう。


「お伺い致しましょう。リコリス第三王女様」


「それでは早速ではありますが、アイク様の実力を見込んで、エルフ王国に巣食う『魔王崇拝者』の駆除をお願いしたいのです」


「エルフ王国でも被害が?」


「えぇ……我がエルフの民も行方不明になったりしております。それだけでなく一番大きな問題は……」


 リコリスは大きく溜息を吐いて、重々しい口調で続ける。


「エルフ王国の象徴たる『ユグドラシル』を破壊しようとしているという情報を掴みまして」

「『ユグドラシル』ですか……」


 ユグドラシルといえば、エルフ王国の都市の中心に生える巨大な木である。


 原作のフォーチュンラバーでは後半戦のイベントの一つでユグドラシルを攻撃してくる魔王崇拝者に勇者である主人公が迎撃するのだが。


「えぇ……今はエルフ王国の騎士達が守護していますが、あくまで受け身の状態。こちらとしても、ずっとリスクを抱えておく意味はないのです」


「なるほど、それで早期解決を求めて。と……」


「えぇ、しかし魔王崇拝者の情報が少ないことも事実。故に、今回秘密裏にギルガ王と密会しようとしたのです。お互い魔王崇拝者の情報を共有するために」


 つまり、今のところは大丈夫だけど鬱陶しいからさっさと対処したいってことか。


 ただ原作だとユグドラシルを攻撃してきた魔王崇拝者を勇者である主人公が倒すのだが、原作との流れが変わってしまった以上、今回も必ずしも勇者が倒すとはいえない。


「故に、今回の魔王崇拝者の幹部を倒したアイク様に是非ともお願いしたいのです」


「エルフ王国第三王女リコリス様の願いとあらば、謹んでお受けいたしましょう」


 国交のため、何より俺とルナの詩合幸せな未来のため頑張るとしよう。


 ただ問題はエルフ王国……正しくはエルフの民はとある問題を抱えている。


 それはプライドが高いところ。


 原作のフォーチュンラバーだと、基本的に特に高飛車であり、人間自体を下に見る傾向がある。


 まぁ、俺は頼まれたことをやってればいいし、最悪ルナを馬鹿にしなければなんでもいいや。


「ところで、怪我の調子は大丈夫でしょうか?」


「はい。おかげさまで、十分動けるくらいには治りましたわ」


「それはなによりです。リコリス第三王女様」


「では早速、明日からよろしいでしょうか? 必要なものは私、エルフ王国第三王女である私が揃えますので」


「承りました」


 俺は仰々しくお辞儀をするのであった。


 まぁ、ポジティブに考えればルナとの国外旅行……もとい新婚旅行ができるとでも思っておこう。

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