3章

第44話 プレオープン

「アイク……あんたってつくづく大きくなってしまったわね」


 ここは俺の執務室。魔王崇拝者の騒動があってから1ヶ月が経過した。


 ついにサルファの街で暮らしている住人で従業員を募集し、募集者の教育が一旦の目処がついたため、ついにプレオープンまでこぎつけることができたので、マーシャ姉を招待した。


 もちろん、教育中の間も普通に働くよりも高い給料を出した結果、想像よりも3ヶ月早くお披露目できた。


 くくくっ……本当なら給料以上の利益を出して貰うからな!!

ちなみにその間もアリサ(太客)も宿泊していた。なんでもこの街の教会に用があるんだと。


 そんなことアリサなんてどうでもいいが、もしもマーシャ姉をもし呼ばなかったら何を言われるから分かったもんじゃない。そんな折、マーシャ姉は今日サルファの街に着いたのだが……。


「マーシャ姉。もしかして、俺って太った??」


 これでも修練は続けている。


 最近になって転生前にやっていた筋トレのメニューもこなし始め、うっすら腹筋も見えてきたはずなのに。


「そういう意味じゃないわよ。ちょっと前までアイクは私のちょっと危なっかしいけど可愛い弟だったのに。知らぬ間に魔王崇拝者の幹部までこんなすごいことばっかり……すごいなぁって思っていただけよ」


 良かった。太った訳ではないようだ。


 万が一にでもリバウンドして体型が戻ったら大変だ。こんなしょうもない理由でルナに別れを切り出されたら……うん。ショックで寝込んでしまうかもしれない。


「それに、硫黄なんて錬金術を嗜む魔法使いに取っては有り余っても困るものじゃないわ? その硫黄をふんだんに使った温泉なんて……並みの錬金術師が見たら卒倒するわよ?? まさか最初から狙ってたの?」


「あぁ……たまたまだよ」


 硫黄がそんなに重宝されているのは知らなかった。 俺はただルナと一緒に温泉に入りたいだけだったのだ。


 それに、原作の知識があるとはいえ、ルナのために行動をしていた結果、たまたまそうなっただけだ。


「たまたまでできることじゃないでしょ? まぁ無事だから良かったけど、魔王崇拝者って危ないからお姉ちゃん心配しちゃうんだからね?」


「ご、ごめん。気をつけるよ、マーシャ姉」


「約束よ? ちゃんと気をつけなさいよ」


 くっ……やっぱりマーシャ姉には逆らえそうにない。


 これがアイクの本能なのだろうか?


 それにしても、原作のアイクは女癖が悪いはずなのに、マーシャ姉には逆らえなかったのだろうか?


 その辺の掘り下げはしてなかったから分からない。まぁ、有難いことにマーシャ姉が悪い人間ではないから別にいいのだけれど。


「そういえば、マーシャ姉。温泉は入らないのか? ここの自慢だから、是非とも入ってほしいのだが……」


「うーん。今はいいかな。あとでゆっくり入ればいいし。今は弟の話を聞きたいかなって」


 マーシャ姉はそう言った。


「そうか……」


 まぁ、マーシャ姉がそういうなら仕方ない。後で入った時に感想でも聞くか。


 是非とも初めて来たユーザーの声は聞きたいからな。改善の余地があるならば直していくのも大事だ。


「失礼致します……あ、マーシャお姉様。お久しぶりです」


「ルナちゃん!! どうしたの!? もしかしてアイクに会いに来たの!! きゃー!! 今日も可愛いわね! はい! ギュー!! そうだ!! お風呂! お風呂一緒に入る??」


「きゃっ! マーシャお姉様……!」


 マーシャ姉はルナを抱きしめる。ルナはマーシャ姉の胸に埋もれていた。


 マーシャお姉様!? さっきは風呂はいいかなって言っていたじゃないですか!!  


 どうしてルナが見えた時に、手のひら返しを!!?


「よいではないか〜。よいではないか〜」


 クソっ……! 別にルナを全力でハグしてるマーシャ姉なんか羨ましくなんてないんだからね!


「そんな嫉妬心むき出しの顔なんてしちゃって! いつも一緒なんだから、少しくらいはルナちゃんを貸しなさいよ!」


 マーシャ姉は口を膨らませて言う。はい……めっちゃ羨ましいです。


「マーシャお姉様……そうですね。アイク様が良いと言えばいいですが……」


 ルナは困ったようにチラチラと俺を見る。


 まぁ、ルナの困惑している顔を見れたし、よしとするか。


「アイク様……?」


「すまないマーシャ姉、やっぱりルナは俺と一緒にいたいみたいだ。やはり夫婦だから――」


「――聖女は騙されておる!! あの女! ルナ・オルハインは将来魔王となる化け物だ!! 我らの正義の鉄槌を!!」


 入口前で叫ぶ男の声。

 

 ……誰だか知らないが俺を怒らせたいんだってなぁ??


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★あとがき★


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