第40話 決戦・魔人化オルトロス

 「これが『魔人化』の力……! 素晴らしい!! 力が!! 漲る!! 冴えわたる!!」


 魔人化したオルトロスは声高らかに笑う。


 光沢のある黒い鎧を身に纏っているが、その鎧自体も一つの生物のようであった。

一目で見れば理解できる。明らかに人間とは違う異質なナニカ。


「魔王と一体になった……ね」


 原作のフォーチュンラバーを何周も遊んだから理解できる。


 こいつは魔王とは程遠い。

 

 原作だと、対峙した瞬間に全員が恐怖をしたと描写があるが、こいつには何も感じない。


 まぁ、中ボスクラスの能力値はあるのだろう。


 ただ問題は原作従来の流れからは出てこなかった敵だということ。


 俺はアーティファクト――『龍星の杖』を構える。


「死になさい!! ダークホライゾン!!」


 オルトロスは黒いビーム状の攻撃を放つ。


「クリムゾンキャノン。ウインドストーム」


 俺はオルトロスが放ったダークホライゾンを打ち消しながら、攻撃を仕掛ける。


「おっと……さすがですね。私の攻撃を簡単に消し去ってしまうとは……ですが、これならどうでしょう?」


 オルトロスは黒い魔法陣を大量に展開する。少なく見積もっても100個くらいはありそうだ。


「さすがに、これはしのげないでしょう!! これが魔人の力!! ただの人間風情が魔王様に逆らおうとした罰です!! くらいなさい!!」


「いや、だからなんだよ」


 俺はそれ以上の魔法陣を展開しぶっ放す。


 オルトロスの攻撃を漏れなく打ち消す。打ち消した上でオルトロスに魔法をぶち当てようとするが、すんでのところで回避されてしまう。


「くっ!! 痛いですね!! やはりオーガの大群を壊滅させたのは貴方だったのでしたか!! しかし隙ありですよ!! 魔法使いは近接攻撃に弱い! これは定石であり、世界の理なのです!」


 そういうと、オルトロスは一瞬の間に距離を詰める。


 オルトロスの腕は剣のような形状になっていた。


 まったく、よく喋る野郎だ。


「肉体強化」


 俺はオルトロスが振るうであろう剣の軌道を半身で交わす。


 そして重心が前かがみになっているオルトロスの顔面を右足で蹴り上げる。


「な、なに!? ぐふっ!」


 オルトロスはよろめく。明らかに困惑している様子だ。


 だからなんだってんだって話だけど。


「な、何故……!! 魔法使いは近接攻撃に弱いと相場が決まっているはず!!」


「どの相場だか知らないが……俺が一番得意な肉体強化の魔法なんだわ」


 俺は腰の回転と重心を乗っけた蹴りをオルトロスに放つ。


 オルトロスが衝撃で吹っ飛んだ後、俺はオルトロスを囲むように魔法陣を大量に展開する。


「そろそろ嫁が待っているんでね。もう終わらすけどいいよな?」


「くっ……なんてひどい笑みなのでしょう」


 ひどい笑みというと、悪役みたいな笑みってことだろうか?


 あと別に俺は笑っている訳ではない。嫁不足ルナによるストレスで口角がピクピクしているだけだ。


「まだ終わらせるにはいかないですね……せめて」


 オルトロスは頭上に巨大な瞳を展開させる。


 もしもこれが爆発系だったら……面倒だな。


 俺はルナの方をチラッと見る。

 

 ルナと(ついでにアリサ達)サルファの街外周に防御魔法を張る。


クリーピング・デス闇の探索者


 刹那。何かが通りすぎた気がした。


「なるほどなるほど……そこにいるのですね。シャドウムーブ」


 ただ瞳と呼ぶには明らかに禍々しすぎる存在を俺は警戒し過ぎた。


「まさか……! させるかよ!!」


 俺は全速力でルナの元に戻る。

 まさか、自動索敵と同じタイプの魔法だったなんて!


「くそっ! 肉体強化!!」


 もしもシールドに傷がついて、ルナが驚きのあまり尻もちをついて怪我をしたら……俺は心穏やかではない。


 そして案の定。オルトロスはルナの目の前に現れる。


「な、なにぃ!!」


 しかし、オルトロスの攻撃は俺のシールドに弾かれる。


「くたばれ!! このゴミが!!」


「ぐはあっ!!」


 俺は龍星の杖でオルトロスをぶっ飛ばす。


「あ、アイク様……」


「すまない。ルナ……怖がらせてしまったね」


 なんてことだ……よく見ると、シールドにうすい傷が入っている。


 おかげでルナがびっくりした顔をしているではないか。


「完璧な攻撃のはずなのに!! やること成すこと気に食わないですね!」


 オルトロスは何か言っているが、俺は怒りでそれどころではない。


「お前……塵も残ると思うなよ」


 俺はそういうと、巨大な魔法陣を展開する。最大火力をもってあいつを葬らないと、俺の気が済まない。


 あぁ……キレちまったよ。あまつさえ、俺の嫁に手を出そうとするなんて……。


「あの……あれがアイク様に仇名す存在ですか?」


 ルナは俺に尋ねる。


「あぁ……そうだ。だが、すぐに片づけるからもう少し待ってくれ」


 俺がそう答えると、ルナはボソボソと呪詛のように呟く。


「許さない許さない許さない……私のアイク様を本気で困らせるなんて……私でさえ我慢しているのに、よくも知らない貴方ごときが?? 絶対に許さない」


「る、ルナ……?」


 ルナの瞳のハイライトが消えている。


「私が……がアイク様の力になるんだから。いるんでしょ!? 私の中に。力を貸してよ!!」


 ルナがそう叫ぶと、突如、光に包まれる。


「ルナ!!」


 ま、まさか……!! ルナが闇落ちしてラスボスになってしまうのか!!?


 そうなってしまったら……!


 まぁ、その時は世界を敵に回せばいっか。


「ぐっ! なに!? この光は……神聖力!?」

 

 オルトロスはうめきながら目を抑える。


「……綺麗」


 アリサが呟く。


 奇しくも俺はアリサと同じことを思った。


「私がアイク様の一番になるの……私がアイク様を一番にするの。それが私だけの特権なんだから」


 ルナは背中にを広げ、宙に浮いている。文字通り使になったのだった。


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★あとがき★


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